夢破壊砲

他人の夢を破壊してしまう「夢破壊砲」を紹介します。ドラえもんの脅し、効かず、という場面で登場する道具です。

のびただって自由な夢を見る権利がある!

そう考えたドラえもんはのびたに夢はしごを貸します。これがあると他人を自分の中に巻き込んで支配下に置くことができるのですが、要領の悪いのびたは夢の中ですらジャイアンとスネ夫にいじめられてしまうのです。

夢の中でジャイアンとスネ夫に追いかけ回されるのびた
どんな状況でもいじめられる人は存在するのだ

ドラえもん28巻「夢はしご」P90:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄

事態を重く見たドラえもんは夢破壊砲を撃つぞとおどしますが、ジャイアンはネズミで応戦。

ジャイアンを脅すドラえもん
ドラえもんのこういう脅しが効いた試しがない

ドラえもん28巻「夢はしご」P90:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄

結局さいごまで夢破壊砲が使われることはありませんでしたが、おそらく相当な破壊力があるひみつ道具なのでしょう。

この「使われなかった」という点が、夢破壊砲をかえって印象的にしています。実際に発射されて効果が描かれていれば、読者は「ああ、そういう道具なのか」と納得できます。しかし脅しとして出てきただけで終わるため、どの程度まで夢を壊せるのか、壊された夢はどうなるのか、想像の余地が大きく残ります。

ドラえもんが道具名だけで相手を止めようとしたことから考えると、少なくとも夢の世界ではかなり危険な道具として認識されているのかもしれません。ジャイアンたちが本気で怖がらなかったのは、夢の中でも相変わらず強気だったからでしょうが、名前だけならかなり物騒です。

どういう効果があるか不明

コミックの中で使われることがなかった夢破壊砲の本当の威力は誰も知りません。相手の夢を破壊して眠りから覚ますだけなのか、しばらくの間は夢が見られなくなってしまうのか?ドラえもんが使う道具ですし相手を傷つけるようなこともないと思われるのですが・・・。

もし夢を強制的に終わらせるだけなら、悪夢に苦しんでいる人を助ける救助道具として使えます。怖い夢から抜け出せない人、夢の中で混乱している人、夢はしごで他人の夢に迷い込んだ人を起こすための非常用装置です。この使い方なら、夢破壊砲という荒っぽい名前に反してかなり実用的です。

一方で、楽しい夢や大切な夢まで壊せるとなると話は変わります。せっかく見ている幸せな夢を外部から破壊されるのは、かなり嫌な体験です。夢は本人の内側にあるものなので、それを破壊する道具は、心の領域へ踏み込む道具でもあります。夢を壊すという言葉には、単なる起床以上の重さがあります。

どうやって存在しているのだろうか?

夢破壊砲は夢の中で登場したひみつ道具です。未来の科学技術で作られた夢破壊砲のはずですが、物理的に存在するひみつ道具なのでしょうか?物体を夢の中に持ち込む技術が開発されていれば話は別ですが、なんとも理解に苦しむ展開ですよね。

夢はしごや夢のりにも同様のことが言えます。

夢の中でひみつ道具を取り出すという行為自体が不思議なのですが、さらにその夢をくっつけてしまうという、すでに想像の域を軽く超えた効果を出すのが夢のりです。

この道具ならではの不思議さが、ドラえもんらしい味わいになっています。夢という実体のないものをどう道具が扱うのかという問いは、22世紀の科学がどういう形で脳や意識を理解しているのかという話にもつながります。現実世界でも、夢の中で受けた体験が起床後の感情や疲労に影響することは実感として知られていますから、夢を物体のように操作する技術が生まれる未来というのも、全くの荒唐無稽とは言い切れません。

夢の中に道具を持ち込む、夢を物体のように扱う、夢と夢をくっつける。こうした発想が自然に展開されるドラえもんの世界は、夢というテーマをかなり真剣に、かつ愉快に扱っているといえます。夢破壊砲は一度も使われなかった道具ですが、その存在だけで夢の世界のルールや技術体系を想像させてくれる、奇妙な存在感のある道具です。

夢に関する道具の中では、ツモリガンのように夢の中でやったつもりの満足感を作る道具や、グッスリまくらのように眠りに入る手前を操作する道具もあります。夢破壊砲はそれらと逆方向で、夢を終わらせる道具として位置づけられます。終わらせる力があるということは、夢の世界にも構造と終点があるということで、22世紀ではそれが外部から操作できるということになります。一度も発射されなかったことで謎が深まった道具ですが、だからこそ想像の余地が残っています。

また、気ままに夢見る機ゆめコントローラーのように夢の内容を選んだり操作したりする道具が存在する一方で、夢破壊砲はそのどちらでもなく、夢を壊してしまう道具です。ある夢を意図的に終わらせる力は、楽しい夢を強制終了することもできる点で、使い方によっては残酷にもなりえます。ジャイアンへの脅しとして使おうとしたドラえもんの判断は、この道具の制止効果を狙ったものだったのかもしれません。結局使われませんでしたが、それがまたこの道具の謎めいた印象を強めています。

名前だけで想像がふくらむ道具

夢破壊砲は、実際の効果が描かれないからこそ名前のインパクトが前に出ます。ドラえもんのひみつ道具には、効果を聞いただけでだいたい使い方がわかるものが多いですが、これは「夢を破壊する」という言葉の幅が広すぎます。夢の風景を壊すのか、夢を見る能力を止めるのか、夢に入り込んだ相手だけを弾き出すのか。どれを想像しても少し怖いです。

また、夢はしごの話では、のびたが夢の中でさえジャイアンとスネ夫に振り回されます。現実だけでなく夢まで侵食されるという状況に対して、ドラえもんが取り出したのが夢破壊砲でした。つまりこれは、夢の自由を守るための最終兵器のようにも見えます。のびたの夢を守るために、他人の介入を強制終了する道具だと考えると、ただ物騒なだけでなく、防衛用の道具としての意味も出てきます。

結局、夢破壊砲は撃たれなかったからこそ、読者の頭の中でいちばん大きな爆発を起こしているのかもしれません。効果を見せないまま名前だけを残す。短い登場でも忘れにくい、実に不思議なひみつ道具です。

夢の中の治安維持道具?

夢はしごのように他人の夢へ入り込める道具があるなら、夢の世界にもトラブルは起こります。勝手に夢へ侵入する、夢の中で相手を追い回す、夢の主導権を奪う。そうした迷惑行為を止めるための道具として考えると、夢破壊砲はかなり納得できます。夢の世界における非常停止ボタンのような存在です。

現実の世界なら、危険があればその場から逃げたり、誰かに助けを求めたりできます。しかし夢の中では、逃げ道もルールも曖昧です。夢を見ている本人が弱気なら、相手に支配されてしまうこともあるでしょう。のびたがまさにその状態でした。だからドラえもんは、夢そのものを壊してでも状況を止めようとしたのかもしれません。

ただ、強制終了の道具は便利な反面、使う側の判断が重くなります。本当に危険な夢なのか、本人がまだ続けたい夢なのか、外からはわかりにくいからです。夢破壊砲は、夢の自由を守る道具でありながら、夢の自由を奪う道具にもなりえます。この矛盾が、未使用のままでも妙に考えさせるポイントです。

使われなかったから目立たないようでいて、夢の世界にルールが必要だと感じさせる道具でもあります。

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