グッスリまくら

睡眠波を出して近くにいる人を眠らせるまくら型のひみつ道具が「グッスリまくら」です。入眠だけでなく、壊れた時には目覚まし電波まで出しており、眠ることと起きることの両方をコントロールできる道具として描かれています。

出木杉くんをなまけさせる作戦

コミック22巻のエピソードでは、出木杉くんが真面目に宿題をやっているせいで、のびた、ジャイアン、スネ夫までたっぷり宿題を出されてしまいます。そこで三人は、出木杉くんを眠らせれば自分たちも楽になると考えます。発想がすでにのびたたちらしいのですが、相手があの出木杉くんなので、計画の無謀さが際立っています。

出木杉くんは勉強ができるだけでなく、運動もできて、性格もよく、美的感覚まであるパーフェクト寄りの人物です。そんな相手をなまけさせる役目をのびたが引き受けるという時点で、成功しそうな気配がほとんどありません。しかも、のびたが家へ帰ると、眠れずに困っていたパパがドラえもんからグッスリまくらを受け取って眠っていました。

グッスリまくらで眠るパパ
自動的に体が引っ張られてしまう

ドラえもん22巻 出木杉グッスリ作戦 P29:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄

グッスリまくらは、そばにいる人を眠らせる睡眠波を出します。普通のまくらに見えますが、実際には睡眠を誘導する装置です。ねむらせまくらのように眠りへ導く道具はドラえもんにいくつかありますが、グッスリまくらはまくら型なので日用品にまぎれやすいところが特徴です。パパが眠れずに困っていた場面に出てくるのも、この道具の実用性をわかりやすく見せています。まくらという形も、眠る時に自然に使うものだから、道具の効果と見た目の用途がきれいに一致しています。

眠らせるはずが眠れなくなる

のびたはこの睡眠波を利用して、出木杉くんを居眠りさせようとします。ところが、まくらを乱暴に扱ったことで故障し、今度は目覚まし電波を出すようになります。眠らせる道具を使った結果、のびた自身が眠れなくなるという逆転が、この話の一番おいしいところです。

眠れなくなったのびたは、仕方なく宿題を進めます。間違いは多いものの、最後までやりきったことで先生に褒められます。出木杉くんを下げる作戦が、のびた自身を少しだけ押し上げる方向に働いてしまうのです。道具で相手を落とすより、自分がやるしかないという、意外にまっすぐな話でもあります。

まじめなのびた
珍しく褒められるのびた

ドラえもん22巻 出木杉グッスリ作戦 P33:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄

グッスリまくらが壊れたことで、眠らせる睡眠波から目を覚ます電波へ切り替わったと考えられます。故障なのに機能が真逆になるあたりがコミカルですが、見方を変えると、もともと睡眠と覚醒の両方を制御できる仕組みを持っていた可能性もあります。めざましロボットが起こす側の道具なら、グッスリまくらは眠らせる側と起こす側を一つにまとめた睡眠管理道具です。

現代人ほど欲しくなる道具

グッスリまくらの実用性はかなり高いです。眠りたいのに眠れない夜、仕事や勉強で生活リズムが崩れた時、睡眠負債がたまっている時に、強制的に眠れる道具があるのは助かります。パパがすぐに使いたくなったのも自然です。

現代でも睡眠は大きな課題です。夜更かし、シフト勤務、スマホの見すぎ、ストレスなどで、眠るタイミングをうまく作れない人は多いはずです。グッスリまくらがあれば、睡眠の開始を外部から支えてくれます。グッスリガスのように空間へ作用する道具と比べると、まくらという形のぶん家庭内で使いやすそうです。

ただし、他人を勝手に眠らせられる点はかなり危うい。出木杉くんを眠らせようとしたのびたの使い方は、どう見ても正しい使い方ではありません。眠りは本人の体調や安全に直結します。便利だからこそ、使う相手と場面を選ばなければならない道具です。

睡眠を管理するという意味では、グッスリまくらはソーナルじょうのように人の状態へ直接働きかける道具に近い怖さもあります。眠る時間を作れるのはありがたい一方で、本人の意志を飛び越えて眠らせることもできてしまいます。病院や災害時の避難所のように、休息が必要なのに眠れない場面では役立つはずです。反対に、勉強や仕事を邪魔する目的で使えば、のびたの計画と同じく迷惑な道具になります。効果が生活に近いほど、使い方の線引きが難しくなるわけです。

もし家庭に一つ置くなら、使用者を限定する安全機能は必須でしょう。本人が同意した時だけ作動する、一定時間で自動停止する、危険な姿勢では眠らせない、といった仕組みがないと、便利さよりも事故のリスクが勝ってしまいます。ドラえもんの道具は軽いノリで出てきますが、グッスリまくらはかなり生活密着型の医療機器に近い存在です。

それでも魅力的なのは、睡眠の悩みが誰にでも身近だからです。空を飛ぶ道具や時間を移動する道具は夢がありますが、今日の夜にちゃんと眠れる道具は、別の意味で切実です。派手さはなくても、毎日を支える道具として考えるとかなり強いですね。

出木杉くんのすごさが逆に際立つ

この話はグッスリまくらの話であると同時に、出木杉くんのすごさを再確認する話でもあります。出木杉くんは超人的なだけの存在ではありません。普通に宿題をこなし、努力もしているから優秀なのです。のびたが目覚まし電波で眠れなくなり、結果的に宿題を終えた流れは、出木杉くんと比べると才能だけでなく日々の積み重ねにも差があるとわかります。道具で相手を落とすより、自分が少しでもやるしかないという、意外にまっすぐな結末です。

すべての才能に溢れた出木杉くん
彼に敵う人はいるのだろうか?

ドラえもん22巻 出木杉グッスリ作戦 P27:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄

それでも、出木杉くんは超人的なだけでなく、やるべきことをきちんとやる姿勢にもあります。のびたが目覚まし電波でしぶしぶ宿題をやる流れは、出木杉くんの普段の積み重ねをのびたが一晩だけ体験した形とも読めます。

夢を見せる方向なら立ちユメぼうのような道具もありますが、グッスリまくらは夢の内容ではなく、眠りに入る入口そのものを操作します。夢を見る以前に、まず眠れるかどうかを解決する道具です。そういう意味では、派手な夢道具よりも地味に見えて、生活への影響はかなり大きいかもしれません。眠る時間をきちんと確保できれば、勉強も仕事も遊びも調子が変わります。ドラえもんの道具の中でも、毎日使いたくなるタイプの実用品です。

のびたが出木杉くんをなまけさせようとして、かえって自分がまじめになる。この皮肉な結末があるから、グッスリまくらは単なる睡眠便利グッズで終わりません。眠ることと起きること、やるべきことから逃げたい気持ちまで絡み合った、ドラえもんらしい切れ味のある一本です。

眠れないからこそ動き出す

この話の面白いところは、グッスリまくらが本来の目的とは逆に働いた結果、のびたが前へ進むところです。眠れない夜はつらいものですが、のびたの場合はその時間を宿題に向けるしかなくなります。本人にやる気があったわけではなく、道具の故障に追い込まれただけなのに、それでも結果として先生に褒められる。ドラえもんらしい皮肉な成長です。

出木杉くんを眠らせることで楽をしようとしたのびたが、自分だけ眠れずに努力する。この反転があるから、グッスリまくらは単なる睡眠道具以上に記憶に残ります。眠りを操る道具なのに、最終的に描かれるのは「起きてやるべきことをやる」ことの価値なのです。

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