もしも海に一人で投げ出されて、広い海を延々と漂流する羽目になったら、無人島でもなんでもいいですから一刻も早くたどり着いて陸地を踏んで安心したいですよね。今回はそんな時のためのひみつ道具、無人島探知スクリューについて解説していきます。
無人島に憧れるのび太
ロビンソン・クルーソーに憧れて無人島で暮らそうと、家を飛び出したのび太。無謀にも訳があるきがしますが、割り箸をかき集めてイカダ作りを画策しているところ、ドラえもんから風船いかだを貸してもらいます。オールもエンジンも搭載していない風船いかだに乗ったのび太は、海の上で途方にくれています。
無人島生活への憧れは子どもなら誰でも一度は抱く気持ちで、ロビンソン・クルーソーはそのロマンを象徴する物語として長く読み継がれています。のび太がこの話に感情移入して家を飛び出す行動力は、普段のだらけた姿とのギャップが大きく、初期コミックの中でも印象的な動機付けとなっています。
しかし実際に海に出てしまうと、風も潮流もある大海原ではどこに流れていくかわかりません。ドラえもんから貸してもらった風船いかだは、自力で動く手段を持たない状態でした。その様子を見たドラえもんが、のび太に内緒でこっそりボートの船底に取り付けた道具が無人島探知スクリューでした。
無人島探知スクリュー
無人島探知スクリューは、自動的に周りの海を調べ、上陸できそうな島を見つけてくれる装置です。しかものび太に道具を使ったと悟られることなく、さりげなく、自然に流れ着いたように見せかけるぐらいの速度を出せる優れものです。
この時点で無人島とわかったのび太はすごい ドラえもん6巻「のび太漂流記」P109:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄
未来の世界では、おそらくすべての船がこの道具を持っていると推察されます。これさえあれば、例え海の上で船が故障しても漂流なんてことは無くなりますからね。また、道案内に特化しているという点では自動車のナビゲーションや、それこそ船のレーダーなどがこれにあたるでしょう。自動車など実験されている自動運転がありますが、自動島見つけ機があれば、船の完全な自動運転も実現間近といえるかもしれません。
この道具の設計として興味深いのは、のび太に悟られないようにするという配慮が込められている点です。単に目的地に誘導するだけなら速度はどうでもいいはずですが、自然に漂流しているように見せかけるという目的のために速度が制御されています。ドラえもんがのび太のプライドを傷つけずに助けることを最初から計算しているということで、この道具の設計仕様がドラえもんの優しさを体現しています。
のび太を見守るドラえもんの優しさ
のび太が無人島生活を始めるまでには結構な紆余曲折があり、ドラえもんからのさりげないサポートとして無人島探知スクリューが登場します。のび太のプライドを傷つけないように、のび太に気付かれないように、そっと近寄ってボートに取り付けているあたりが、ドラえもんなりの優しさです。
ドラえもんの位置がスクリューに巻き込まれそうだ ドラえもん6巻「のび太漂流記」P109:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄
ドラえもんがこっそり取り付けている場面のコマは、ドラえもん自身がスクリューに巻き込まれそうな位置にいるという危なっかしさもあって、読者には笑えるシーンになっています。何かを助けようとして自分がヒヤリとしそうな状況になるのはドラえもんらしく、こういった細部の描写に藤子先生のユーモアが宿っています。
のび太が自力で無人島にたどり着いたという達成感を感じながら生活できたのも、実はこの道具のおかげです。達成感を奪わずにさりげなく助けるという配慮は、のび太の成長を見守るドラえもんの姿勢を象徴するものとして、このエピソードを印象深くしています。
吸着能力もすごい
ドラえもんがさりげなくボートの船底に取り付けた無人島探知スクリュー。小さなプロペラが回転してボートの推進力を生み出しているわけですが、ボートと機械の接着面も非常に強力な吸着力があると思われます。海水に触れながらもボートにピタリとくっつき、プロペラの推進力を失うことなくボート全体に伝えるという機能は、特殊な取り付け機構を持っていることを示しています。
実際の船のスクリューは水中に固定された状態で回転することで推進力を得ますが、この道具は取り外し可能な形で外付けできるわけです。それでいて航行中に外れたり推進力が弱まったりしないという性能は、未来の道具の技術力を感じさせます。
サバイバル能力が成長するのび太
勢いだけ強く、なんだかんでドラえもんのひみつ道具にも頼りっぱなしののび太。今回の無人島生活もほんの数時間しか耐えることができませんでした。ドラえもんに内緒でサポートされていたとはいえ、無人島に着いてからはのび太なりに生活しようとしていた点は評価できます。
しかし少し先のコミックでは、ひみつ道具がいくつかあったとはいえ、たった一人で10年もの歳月を無人島で生き抜いてしまうストーリーが紹介されます。やるときゃやるのび太のサバイバル力は、回を重ねるごとに成長しているようです。この最初の無人島挑戦がたった数時間で終わったことを考えると、後の10年間の成長はなおさら際立ちます。
探偵・調査系の道具としては、人探し機や強力においついせき鼻のように人を探す道具が多い中、無人島探知スクリューは場所を見つけるという点で場所をさがす機械に近い性質を持っています。ただし場所をさがす機械は条件を入力して検索するのに対し、無人島探知スクリューは船底に取り付けるだけで自動的に動くという手軽さが特徴です。マグマ探知機のように特定の対象を探知するという方向性は共通していますが、マグマ探知機が地中の物質を探すのに対しこちらは地上の島を探すという対照的な使い方が面白いところです。
このひみつ道具が印象に残る理由
このひみつ道具の面白さは、ただ便利なだけではなく、使った瞬間に日常の見え方が少し変わるところにあります。ドラえもんの道具は、困りごとを一発で解決してくれるように見えて、実際には使う人の性格や判断がそのまま結果に出ます。のび太が使えば楽をしたい気持ちが前に出ますし、ドラえもんが使えば助けるための道具になります。同じ道具でも、誰がどんな目的で使うかによって印象が変わるのです。
また、名前や見た目が身近であるほど、効果とのギャップが強くなります。普通ならありえないことが、手の届きそうな形の道具で実現してしまう。そこに読者が「自分ならどう使うだろう」と想像したくなる余白があります。物語の中での出番が短くても、発想がはっきりしている道具は記憶に残りやすいですね。
日常で使うなら注意したいこと
もし現実にこの道具を使えるなら、まず考えたいのは周囲への影響です。自分にとって便利でも、家族や友達、近くにいる人に迷惑がかかるなら正しい使い方とはいえません。ドラえもんのエピソードでは、最初は小さな願いから始まった使い方が、だんだん大きな騒動に広がることがよくあります。便利さに気を取られるほど、基本的な確認を忘れてしまうのです。
効果の範囲、持続時間、元に戻す方法、失敗した時の対処。これらを分からないまま使うと、どんなに魅力的な道具でも危険になります。ひみつ道具は夢をかなえるアイテムである一方、使う人に責任を求めるアイテムでもあります。そこまで含めて考えると、単なる便利グッズではなく、未来の技術との付き合い方を教えてくれる存在だといえるでしょう。
読者が想像を広げやすい道具
作中で描かれた使い方は、この道具の可能性の一部にすぎません。学校で使ったらどうなるか、家で使ったらどうなるか、旅行や災害時に役立つのか、逆にどんなトラブルが起きるのか。そう考えていくと、短い登場シーンだけでは見えなかった魅力が広がります。
ドラえもんのひみつ道具紹介の楽しさは、性能を確認するだけでなく、その先の使い道を読者自身が想像できるところにあります。この道具も、便利さ、危うさ、ユーモアが同時に詰まっているからこそ、もっと深く考えたくなる一品です。




