強力においついせき鼻

犬の嗅覚はおよそ人間の1万倍といわれています。そんな犬の強い嗅覚を身に付けられる強力においついせき鼻は、装着するだけで人間が犬と同等の追跡能力を手に入れられるユニークなひみつ道具です。コミック9巻のエピソードに登場します。

本編での使われ方

いいことをすると必ず感謝されてお礼をしてもらえるウラシマキャンデーを舐めたのび太。お金持ちの夫人が持っていた高価な瓶を破損から守ったのび太はお礼のために家に呼ばれ、ご馳走を食べたりそのお家の娘の姫子さんのバレエなどを見たりと、楽しい時間を過ごしていました。

しかしキャンデーの効果はなくなることなく、帰らないといけない時間になっても帰してくれません。帰ろうとするのび太の靴を隠そうとまでしたのは驚きです。のび太の帰りが遅いことにマンカンになっているママの様子を見たドラミちゃんは、強力においついせき鼻でのび太の匂いを嗅ぎつけて、夫人の家を発見し、のび太を見つけ出すことができたのでした。

のび太を探しに来たドラミちゃんがこの道具を装着して追跡するという展開は、のび太の居場所が特定できない状況での緊急対応として自然な流れです。においという物理的な手掛かりを頼りに対象者を追うという、犬の捜索能力を人間が借りるという発想は、道具の使い方として非常にわかりやすく、子どもが読んでもすぐ理解できる設計になっています。

のび太の匂いを追跡するドラミちゃん
犬型ロボットドラミちゃん

ドラえもん9巻「ウラシマキャンデー」P84:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄

ドラミちゃんがのび太を発見したことで、夫人の家に乗り込んで状況を整理できました。ウラシマキャンデーの効果でいいことをし続けなければならないのび太の拘束から解放するという役割を、強力においついせき鼻が間接的に担ったエピソードです。

もしも現実にあったら

強力においついせき鼻が現実にあったとしたら、においで人を追跡できるとなると、使われるのはやはり警察関連でしょう。人間であっても警察犬と同じ役目ができるということは、それだけ捜索活動の幅が広がるということです。特に迷子を探したり、人命救助や行方不明者の捜索においては、従来の方法では到達できなかった場所や状況でも対象者を発見できる可能性があります。

においで追跡するものであれば、人に限ったことではありません。最近は麻薬や輸入禁止物を臭いで探知する犬も活躍していますが、強力においついせき鼻があれば人間でもそういった場面で活躍できると思われます。人間である分、何の匂いであるかをその場できちんと把握して状況を整理できるという点もポイントが高いところです。警察犬は匂いを頼りに追跡できますが、その匂いが何を意味するかまでは理解できません。道具を装着した人間ならば追跡しながらリアルタイムで状況を判断できるわけで、これは大きな強みといえます。

また、においで追跡するという性質から、逃走犯が変装したり整形したりしても追跡を続けられるという利点もあります。見た目を変えても体臭や個人の匂いの特徴は変えることが難しく、外見に依存した追跡方法では発見できないような案件でも対応できる可能性があります。

ドラミちゃんが使うとかわいい

犬の鼻のような形をしている強力においついせき鼻。鼻と口の部分を覆うような形をしているのが特徴的ですが、ドラミちゃんがこれを使うとなかなかかわいい見た目になります。

犬の鼻をしたドラミちゃん
こういうキャラがいても違和感がない

ドラえもん9巻「ウラシマキャンデー」P85:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄

猫型ロボットが犬の鼻をつけるというなんともシュールな一コマですが、ドラミちゃんファンにとっては印象的なシーンでもあります。ドラえもんシリーズにはドラミちゃんの出番が少ないため、こういった場面でのキャラクターとしての魅力が際立ちます。普段はお姉さんらしく落ち着いているドラミちゃんが、犬の鼻をつけて必死にのび太を探すという落差がユーモラスで、読者の記憶に残りやすい場面です。

道具のデザインという観点でも、犬の鼻の形を模した追跡道具というのは視覚的にわかりやすく、ドラえもんの道具デザインの中でも特に機能と外見が一致した例といえます。何のための道具かが外見だけで伝わるというのは、子ども向けコミックとして理想的な設計です。

似たような道具

人を探す道具はドラえもんに数多く登場します。人探し機は箱の上に矢印が付いていて、矢印が回転して探している人物の位置を示し、その人のところまで案内してくれる道具です。事前の準備なしにすぐ使えるシンプルさが特徴で、強力においついせき鼻と異なるのは物理的な匂いではなく未知の探知方式で対象を捉えるという点です。

トレーサーバッジは色々な形をしたバッジとモニターがセットになっていて、人に付けたバッジが発信源となり、居場所がモニターに表示されるようになっています。事前に対象者にバッジを付ける必要がある分、突然の行方不明には対応しにくいですが、継続的な追跡という点では優れています。

強力においついせき鼻が他の探知系道具と異なるのは、においという物理的・化学的な手掛かりを利用するという点です。電子機器なしに機能するため電波妨害などにも影響されにくく、使う人の直感的な感覚とも連動しやすいという特徴があります。よかん虫で予感を持ちながら、強力においついせき鼻で実際の追跡をするという組み合わせは、探偵仕事としての完成度が高い道具の使い方といえます。

においで追跡するという性質上、水の中や雨の後など匂いが流れやすい環境では精度が落ちることも考えられますが、それを差し引いてもドラえもんが持つ探偵系道具の中では実用性が高い部類に入るといえます。道具のシンプルさと実際の効果が一致しているという点で、ドラえもんの道具の中でもわかりやすく頼りになる一品です。

このひみつ道具が印象に残る理由

このひみつ道具の面白さは、ただ便利なだけではなく、使った瞬間に日常の見え方が少し変わるところにあります。ドラえもんの道具は、困りごとを一発で解決してくれるように見えて、実際には使う人の性格や判断がそのまま結果に出ます。のび太が使えば楽をしたい気持ちが前に出ますし、ドラえもんが使えば助けるための道具になります。同じ道具でも、誰がどんな目的で使うかによって印象が変わるのです。

また、名前や見た目が身近であるほど、効果とのギャップが強くなります。普通ならありえないことが、手の届きそうな形の道具で実現してしまう。そこに読者が「自分ならどう使うだろう」と想像したくなる余白があります。物語の中での出番が短くても、発想がはっきりしている道具は記憶に残りやすいですね。

日常で使うなら注意したいこと

もし現実にこの道具を使えるなら、まず考えたいのは周囲への影響です。自分にとって便利でも、家族や友達、近くにいる人に迷惑がかかるなら正しい使い方とはいえません。ドラえもんのエピソードでは、最初は小さな願いから始まった使い方が、だんだん大きな騒動に広がることがよくあります。便利さに気を取られるほど、基本的な確認を忘れてしまうのです。

効果の範囲、持続時間、元に戻す方法、失敗した時の対処。これらを分からないまま使うと、どんなに魅力的な道具でも危険になります。ひみつ道具は夢をかなえるアイテムである一方、使う人に責任を求めるアイテムでもあります。そこまで含めて考えると、単なる便利グッズではなく、未来の技術との付き合い方を教えてくれる存在だといえるでしょう。

読者が想像を広げやすい道具

作中で描かれた使い方は、この道具の可能性の一部にすぎません。学校で使ったらどうなるか、家で使ったらどうなるか、旅行や災害時に役立つのか、逆にどんなトラブルが起きるのか。そう考えていくと、短い登場シーンだけでは見えなかった魅力が広がります。

ドラえもんのひみつ道具紹介の楽しさは、性能を確認するだけでなく、その先の使い道を読者自身が想像できるところにあります。この道具も、便利さ、危うさ、ユーモアが同時に詰まっているからこそ、もっと深く考えたくなる一品です。

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