夢のり

人の夢と夢をくっつけることができる「夢のり」を紹介します。

夢の中でこらしめろ!

のびたが見た夢の内容に文句をつけるジャイアンとスネ夫。夢の中で仕返ししようということで夢はしごを取り出したドラえもんでしたが、要領の悪いのびたは夢の中でさえドジっ子なのです。そんなジャイアンとスネ夫を止めるべく夢破壊砲でおどしても効かず、最後の手段として夢のりを取り出します。

夢のりで夢をくっつけたドラえもん
夢をくっつけるという次元を調節した効果

ドラえもん28巻「夢はしご」P91:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄

人の夢同士をくっつける効果があり、ジャイアンとスネ夫の母ちゃんの夢を夢のりでくっつけて追いかけ回してもらうことにしたのでした。

この使い方が見事なのは、ジャイアンとスネ夫にとって一番効く相手を夢の中へ呼び込んでいる点です。現実ではのびたに強気な二人も、母ちゃんには弱い。ドラえもんは力でやり返すのではなく、二人の人間関係そのものを利用して夢をつなげています。夢のりは単に夢を接着する道具ですが、誰の夢と誰の夢をつなぐかによって効果が大きく変わるのです。

夢の中は何でもありのように見えて、本人の苦手なものや気にしていることが強く出ます。だからこそ、ジャイアンとスネ夫の母ちゃんという選択が絶妙です。夢のりは、夢の世界を編集する道具であると同時に、相手の心理的な弱点を突く道具にもなります。

物理の世界を完全に越えたひみつ道具

夢の中でひみつ道具を取り出す行為自体が不思議なのですが、さらにその夢をくっつけてしまうという、すでに想像の域を軽く越えた効果を出すのが夢のりです。

ドラえもんの表現から、ドラえもんは夢を物体としてつかんでのり付けしたことになります。なんとも不思議な現象としかいいようがありません。

夢を物体として扱う技術という点では、夢はしごも同様の発想から来ています。夢はしごは夢の中へ移動する道具で、夢のりは夢と夢をつなぎ合わせる道具です。夢を観察するゆめグラス、夢に入る夢はしご、夢をつなぐ夢のりと、夢を扱う技術が段階的に存在しているのが面白いところです。

名前が「のり」なのも、かなりドラえもんらしいセンスです。夢と夢を接続するというと難しい技術に聞こえますが、それを文房具ののりのように表現することで、一気に親しみやすくなります。実際には脳や意識をつなぐ高度な装置のはずなのに、見た目や名前は子どもにもわかる道具として成立している。このギャップがひみつ道具の楽しいところです。

もし夢を紙のように扱えるなら、貼るだけでなく、切る、折る、重ねるといった操作もできそうです。夢破壊砲が夢を壊す道具なら、夢のりは夢を編集してつなぐ道具です。夢の世界にも工作のような感覚を持ち込んでいる点が、非常にユニークです。

夢は肉体と連携する

夢の中で追いかけ回されたジャイアンとスネ夫は、朝起きても体がクタクタだったようです。

夢の中で疲れたジャイアンとスネ夫
現実世界にも影響が出るようだ

ドラえもん28巻「夢はしご」P91:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄

怖い夢を見て精神的にゲンナリすることはあっても、肉体的に疲労を感じることはまずありません。夢のりや夢はしごなど夢に関するひみつ道具はどうやら人間の肉体と大きな関係性があるらしく、多少なりとも現実世界に影響を及ぼすようです。

もし夢の中でスーパーマンみたいに大活躍していれば、現実世界でも少し力が鍛えられていたりするのでしょうか?

この夢と肉体の連携という設定は、夢のりを単なる笑いの道具以上のものにしています。夢の中で受けた負荷が現実の体に影響するなら、夢のりで過酷な状況の夢につなぐことは、肉体的なダメージを与える手段にもなりえます。ジャイアンとスネ夫を母ちゃんの夢につないで追いかけ回させるのは、のびたへの仕返しとして軽く見えますが、実際には体力を消耗させているわけです。

反対に、もし楽しくて活発な夢に自分の夢をつなげれば、体が少し元気になったり、特定の動きが鍛えられたりする可能性もあります。スポーツの動作を夢の中で繰り返すことで技術が向上するなら、夢のりは訓練ツールとしても使えそうです。ツモリガンがやったつもりの満足感を作るのに対して、夢のりは夢の場を共有することで体験そのものを変えます。

夢の内容を整えたい場合はゆめコントローラー、夢に入りたい場合は夢はしご、夢と夢をつなぎたい場合は夢のりと、それぞれ役割が異なります。グッスリまくらで眠りに入り、夢はしごで目的の夢へ移動し、夢のりで別の夢とつなぐという流れを組み合わせると、夢の世界がかなり複雑に操作できることになります。ドラえもんが夢のりを最後の手段として使ったのも、この道具の効果が他の道具と組み合わせた時に最大化されるからかもしれません。

夢のりは名前の通り、のりで夢を貼り付ける道具です。夢というつかめないものを物体のように扱う発想が、この道具のすべてを表しています。コミックでは一場面しか登場しませんが、その一場面でジャイアンとスネ夫を母ちゃんの夢につなぐという使い方が完璧で、道具の性質とキャラクターの関係性が見事にはまっています。夢と夢をつなぐだけのシンプルな道具が、これほど効いた終わり方になるのは、ドラえもんの短編としての組み立てのうまさがあってこそです。

夢を共有する怖さと面白さ

夢のりが現実にあれば、楽しい使い方もたくさん考えられます。友達同士で同じ夢を見たり、家族で旅行のような夢を共有したり、離れた相手と夢の中で会ったりできるかもしれません。睡眠時間が、ただ休むだけでなく共有体験の場になります。

しかし、夢を勝手につなげられるとなるとかなり怖いです。自分だけのはずの夢に、知らない人や苦手な人の夢が突然混ざってくる。夢の中では現実よりも無防備なので、相手を選ばずにつなぐのは危険です。楽しい夢を見ていたのに、誰かの悪夢と接続される可能性もあります。

だから夢のりは、使い方しだいで交流の道具にも、いやがらせの道具にもなります。ドラえもんが使った場面は、のびたを助けるための反撃でしたが、それでもジャイアンとスネ夫はかなり疲れています。夢をつなぐという一見かわいい効果の裏に、相手の睡眠体験を大きく変えてしまう力がある。そこが夢のりの奥深さです。

また、夢のりは夢はしごとセットで考えると、より使い道が広がります。夢はしごで夢の中へ入り、夢のりで別の夢へつなぐ。これを繰り返せば、いくつもの夢を渡り歩く巨大な夢の迷路が作れてしまうかもしれません。楽しい夢だけをつなげれば遊園地のようになりますし、怖い夢ばかりつなげれば悪夢の連続になります。

夢を「貼る」という単純な動作で、個人の内面同士が接続される。そう考えると、かなり大胆な道具です。現実では人と人との距離を縮めるには会話や時間が必要ですが、夢のりはその距離を一気に接着してしまいます。だからこそ、軽い名前に反して扱いは慎重であるべきでしょう。

ジャイアンとスネ夫の夢に母ちゃんの夢を貼り付けるというオチは笑えますが、実はかなり高度な夢操作です。相手の性格、苦手な人物、夢の状態を見極めたうえで、もっとも効果的な夢をつなぐ。ドラえもんの判断力と道具運用のうまさが光る場面でもあります。

一場面だけの登場でも、夢そのものを素材として扱う発想が強く残る道具です。夢を貼れるなら、夢はもうただ見るものではなく、作り替えられる世界なのだと感じさせます。

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