眠っている間に見た夢の内容がそのまま現実になるひみつ道具が「うつつまくら」です。枕の横についている調節つまみで夢の内容を修正することもでき、現実と夢の世界を自在に入れ替えられるという、夢好きには夢のような道具です。
うつつまくらの効果
まくら型のひみつ道具のうつつまくら。頭をのせて夢を見ると、見た夢が現実となります。まくらの横部分に付属している調節つまみにより、夢の内容を自身の都合の良い内容に修正することができます。
代わりに、今まで自分が生活していた世界は夢の中の出来事として認識されるようになります。現実世界と夢の世界が逆転するということです。うつつまくらを繰り返し使うことで、どちらが現実でどちらが夢なのかわからなくなってしまう危険性を孕んだ道具でもあります。
この不思議な仕組みは、ゆめまくらとも共通点がありますが、うつつまくらの方は現実と夢が完全に入れ替わるという点がより極端な特徴といえます。
現実と夢をとっかえっこ
新学期の朝、爽快な目覚めを迎えたのび太。夏休みの宿題も早々に済ませていて、朝の支度も整え、家を出るまで余裕があるため予習を始めます。その様子をみたドラえもんが、「これはありえない。夢だから目覚めなさい」と、のび太に呼びかけると、のび太は目覚めます。
そう、今の出来事はすべてのび太の夢だったのです。現実世界で目覚めたのび太。それは夏休みの最終日、宿題も全く終わっていない、いつものび太の日常です。
さっきの夢が良かった、なぜ起こしたんとドラえもんに詰め寄った時、ドラえもんが出したひみつ道具が「うつつまくら」です。
絶望的な朝の目覚めだ ドラえもん5巻「うつつまくら」P140:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄
夢の内容を現実にしてしまううつつまくらを使い、のび太は再び眠りにつくのです。
全てがパーフェクトなのび太
遅刻もしない、宿題も終わっている。そんな完璧なのび太が学校にいくと、みんなが不思議な目でのび太を見ています。「のび太、頭がおかしくなったのか?」
普段ののび太を知っている同級生からすると、のび太の変わりようが信じられないのです。
教師失格の言動 ドラえもん5巻「うつつまくら」P143:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄
先生にすら信じてもらえないのび太は扱いに激怒し、うつつまくらを使って現実の世界に戻ってきます。誰からも尊敬される自分になるよう設定を変えて眠りますが、最後はスパイに命を狙われてしまうのび太。再び目覚めた時、ドラえもんが一言「うつつまくらなんて道具はないよ」。何が何だかわからなくなったのび太でした。
パラレルワールドとして展開される
現実世界と夢の世界が逆転すると、今まで自分が生活していた世界はパラレルワールドとして進むものと考えられます。あっちの世界とこっちの世界。それが現実であろうと夢であろうと、物事は関係なく進んでいくということです。
異なる世界で自分と同じ人間の人生があると考えると、不思議な気持ちになりますね。ドラえもんの世界には、もしもボックスのように別の可能性の世界を体験できる道具もありますが、うつつまくらが作り出す世界はもっと個人的で、自分の夢というフィルターを通した世界です。
使いすぎるな、危険
コミックでのび太が体験したように、うつつまくらを使いすぎ、夢と現実の世界の区別がつかなくなると、頭が混乱してしまう恐れがあります。
世にも奇妙な物語 ドラえもん5巻「うつつまくら」P151:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄
さらに、夢が私たちに見せてくれる世界は想像力の域を遥かに超えた世界です。ほら、皆さんも夢の中では空を飛んでいたり、いきなり世界が二転・三転し、わけのわからない展開になることってありますよね。夢の世界を現実にしてしまうと、それらのような不思議な世界が現実になってしまうのです。
調子に乗って使いすぎると、痛い目を見る恐れがありますね。うつつまくらが体現するような「夢で見たことが現実になる」という発想は、あらかじめ日記の「書いたことが現実になる」という仕組みとも通じるところがあります。どちらも、自分の望む未来を形にできる反面、予期せぬ副作用がつきまとう点が似ています。
夢をコントロールできる世界
ドラえもんのいる世界では、どうやら睡眠中の夢でさえ自由にコントロールできる時代になっているようです。うつつまくらまで使わなくても、自分が望んだ夢を見ることぐらい簡単にできそうな気もしますよね。
たとえば、グッスリまくらは深い眠りを実現するための道具ですが、うつつまくらとの違いは夢の内容に干渉するかどうかという点です。また、夢はしごのように夢の世界に実際に入り込む道具もあり、夢にまつわるひみつ道具の多彩さにはいつも驚かされます。
人生のうち3分の1は布団の中にいるわけなので、その時間をいかに効率的に使うかは、我々世代の人にとっては非常に興味深いテーマではないでしょうか。うつつまくらが実現する「夢が現実になる」というコンセプトは、人間の根源的な願望を突いた道具だといえます。夢と現実の境界があいまいになることのリスクさえ乗り越えられれば、これほど魅力的な道具はないかもしれません。
ただ、のび太のエピソードが示すように、夢の中での完璧な自分と現実の自分とのギャップに直面した時、人はどちらを選ぶのかという問いかけを、この道具は私たちに突きつけています。





