さいなん報知機

災難というのはいつどこで起きるかが分からないものです。もし自分に降りかかる災難を事前に知ることが出来たら、不幸な事故が起きるのを未然に防ぐことも出来るかもしれません。今回はそんな夢を叶えてくれるひみつ道具、さいなん報知機を紹介します。

災難の申し子、のび太

のび太は今日も道を歩いているだけで色々な災難に出くわします。自分の不幸を嘆くのび太でしたが、ドラえもんからはもっと注意して歩いた方がいいと逆に注意されます。のび太はいやいや、僕は不幸の星のもとに生まれたんだと自分が不幸であることを主張して譲りません。

のび太が不幸な目にあいやすいのはコミック全体を通じた設定の一つで、登場する度にさまざまな災難が降りかかります。これはのび太のキャラクターとしての役割でもありますが、コミックをよく読んでいると、のび太が特に不注意なわけでも運が悪いわけでもなく、むしろ普通の行動をしているのに次々と問題が発生するという描かれ方が多いことに気づきます。それがコミックの面白みでもあり、読者がのび太に感情移入しやすい理由でもあります。

不幸な星の下に生まれたのび太
ドラえもんの容赦ない言葉がおもしろい

ドラえもん7巻「さいなんにかこまれた話」P75:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄

せめて災難が起きるのを知ることが出来たら避けることも出来るのにとぼやくのび太に、ドラえもんが出したひみつ道具がさいなん報知機でした。これを腕に付けていれば災難が起きる前にブザーが鳴って知らせてくれる便利な道具です。危険が迫ったことをリアルタイムで知らせてくれるという発想は、現代の気象警報アプリやハザードマップにも通じるものがあります。

ありとあらゆる災難に囲まれるのび太

さいなん報知機を使って危険予知ができるようになったのはいいとして、のび太の周りはとにかく災難だらけです。

  • 電柱工事をしていた人が落としたペンチが頭にヒット
  • ジャイアンがのび太をいじめるために探していた
  • ママに怒られる
  • ブザーの音で赤ちゃんを起こされたお母さんの怒り
落ちてきたペンチにぶつかるのび太
現実世界なら大事故である

ドラえもん7巻「さいなんにかこまれた話」P77:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄

われわれが生活していると、1日1つくらいは不幸な出来事が起こるものです。のび太は立て続けにこれだけの災難に遭遇するのですから、いかに不幸な境遇にあるかがわかりますね。電柱工事で落とされたペンチというのは現実世界なら大事故ですが、コミックの中ではコミカルに処理されており、それがドラえもんの世界観の独特のバランス感覚を作り出しています。

ブザーの音で赤ちゃんを起こしてしまうというのは、さいなん報知機そのものが新たな災難を生む皮肉な展開です。道具を使って災難を避けようとしているのに、道具の作動が別の問題を引き起こすというオチは、藤子先生のユーモアの典型で、道具が完璧には機能しないという設計の面白さを示しています。

さいなん報知機の欠点

あらゆる災難を事前に知らせてくれるさいなん報知機。一見便利に見えて、実はかなり使い所が難しいひみつ道具でもあります。というのも、危険が迫るとブザーが鳴って知らせてくれるのはいいのですが、災難の内容まではわからないのです。

地震が来るならテーブルの下に隠れるし、物が落ちてくるならその場を離れるし、突然雨が降り出すのなら屋根の下に行くし、とっさに対策を立てることができます。しかしブザーが鳴って知らせてくれるだけでは、次にどういう回避行動を取ればいいかまではわからないのです。危険の種類が分からなければ、同じブザーの音に対してどう反応すべきか毎回判断が難しくなります。

ただし、ブザーを聞いて注意力を高めることはできるので、全く何もしないよりかはマシなのかもしれません。何も知らずに突然ペンチが降ってくるよりも、ブザーで警戒していれば少し周囲を確認する余裕が生まれます。ブザーを聞いた瞬間に周囲を素早く見渡して状況を把握するという使い方なら、かなり有効な道具として機能するはずです。

災難をゼロにすることはできないのか

さいなん報知機に似たような道具だと、コミック12巻のわすれ鳥があります。これは忘れものをするとワスレタ!ワスレタ!と鳴いて知らせてくれますが、何を忘れたのかは教えてくれないあたりが似ています。知らせてくれるけど具体的な内容はわからないという設計は、この手の道具が共通して抱える限界でもあります。

他にもコミック12巻のよかん虫などはどうでしょうか。これは予感をした人の頭に止まってはばたくと、その予感が本当になるという道具ですが、肝心ののび太がろくでもない予感しかしないので、結局ひどい目にあうというオチでした。優秀なひみつ道具が揃えるドラえもんの道具でも、完全に災難をゼロにするのは難しいようです。

もちろん人によってひみつ道具の使い方は千差万別なので、うまく使えばうまく回避できる可能性はあります。さいなん報知機で警戒心を高めながら、人探し機でジャイアンの居場所をあらかじめ把握しておいたり、場所をさがす機械で安全な逃げ場を探しておくという組み合わせは、のび太の日常生活防衛として理にかなっています。

探知・警告系の道具としては、強力においついせき鼻のように追跡する側の道具もあれば、さいなん報知機のように守られる側の道具もあります。マグマ探知機のように特定の対象を探知するタイプと比べると、さいなん報知機は対象が災難という漠然としたものである分、幅広い状況に対応できる可能性を持ちます。ドラえもんの道具は完璧なものばかりではなく、どこかに欠点や使い所の難しさを持っているものが多いですが、そのバランスがこれほど長く愛され続けている理由の一つだといえます。

このひみつ道具が印象に残る理由

このひみつ道具の面白さは、ただ便利なだけではなく、使った瞬間に日常の見え方が少し変わるところにあります。ドラえもんの道具は、困りごとを一発で解決してくれるように見えて、実際には使う人の性格や判断がそのまま結果に出ます。のび太が使えば楽をしたい気持ちが前に出ますし、ドラえもんが使えば助けるための道具になります。同じ道具でも、誰がどんな目的で使うかによって印象が変わるのです。

また、名前や見た目が身近であるほど、効果とのギャップが強くなります。普通ならありえないことが、手の届きそうな形の道具で実現してしまう。そこに読者が「自分ならどう使うだろう」と想像したくなる余白があります。物語の中での出番が短くても、発想がはっきりしている道具は記憶に残りやすいですね。

日常で使うなら注意したいこと

もし現実にこの道具を使えるなら、まず考えたいのは周囲への影響です。自分にとって便利でも、家族や友達、近くにいる人に迷惑がかかるなら正しい使い方とはいえません。ドラえもんのエピソードでは、最初は小さな願いから始まった使い方が、だんだん大きな騒動に広がることがよくあります。便利さに気を取られるほど、基本的な確認を忘れてしまうのです。

効果の範囲、持続時間、元に戻す方法、失敗した時の対処。これらを分からないまま使うと、どんなに魅力的な道具でも危険になります。ひみつ道具は夢をかなえるアイテムである一方、使う人に責任を求めるアイテムでもあります。そこまで含めて考えると、単なる便利グッズではなく、未来の技術との付き合い方を教えてくれる存在だといえるでしょう。

読者が想像を広げやすい道具

作中で描かれた使い方は、この道具の可能性の一部にすぎません。学校で使ったらどうなるか、家で使ったらどうなるか、旅行や災害時に役立つのか、逆にどんなトラブルが起きるのか。そう考えていくと、短い登場シーンだけでは見えなかった魅力が広がります。

ドラえもんのひみつ道具紹介の楽しさは、性能を確認するだけでなく、その先の使い道を読者自身が想像できるところにあります。この道具も、便利さ、危うさ、ユーモアが同時に詰まっているからこそ、もっと深く考えたくなる一品です。

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