ロケット型のラジコンをリアルな操縦席から操り、搭載したカメラからはすべての景色を宇宙に見せてしまう「ロケットそうじゅうくんれん機」です。現代版ドローンの進化版といったところで、リアルな宇宙空間を楽しむことができますよ。
宇宙旅行に興味があっても、実際に行くのは難しい。そんなのびたの夢に応えてくれる道具です。
宇宙旅行とのびた
本を読んで宇宙旅行に興味を示すのびた。ドジでのろまのびたに宇宙空間は難しすぎるというドラえもんが出したのが「ロケットそうじゅうくんれん機」です。リアルな操縦席とラジコン型宇宙船がセットになっていて、ラジコンが映し出す様子はすべて宇宙空間として投影されます。現実ではとても宇宙に行けないのびたが宇宙旅行の夢を持つこと自体が、このひみつ道具の存在意義を語っています。夢を諦めさせるのではなく、疑似的にでもその夢を叶えてあげるドラえもんの優しさが感じられる道具です。「本物は無理でも、体験させてあげたい」というドラえもんの思いやりは、ロケットそうじゅうくんれん機を単なる玩具以上の意味を持つひみつ道具にしています。
夢が広がる道具。まさにドラえもんという感じ。 ドラえもん13巻「ロケットそうじゅうくんれん機」P97:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄
家にいながら宇宙旅行を楽しめるとのびたは大喜び! 街に出ると、いつもの景色とは一変し、スリルとエンターテイメントにあふれることばかり。命からがらブラックホールから逃げ出したり、怒りっぽい怪獣から逃げたりしましたが、最終的にはラジコンを虫と勘違いしたジャイアンの手によって破壊されてしまいました。
ハエたたきでロケットを破壊するジャイアンの馬鹿力に注目 ドラえもん13巻「ロケットそうじゅうくんれん機」P102:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄
ドローンの目指すべき進化系
最近はドローンが話題ですが、ロケットそうじゅうくんれん機はドローンの将来像のようなひみつ道具です。操縦性能はもちろんのこと、仮想世界(宇宙空間)を体感できる機能はさすが未来の道具です。
ドローンとVRが融合したような機能なので、近い将来おなじような発明があるかもしれません。誰でもお手軽に遊ぶことができれば、爆発的なヒットを生み出すことでしょう。実際に現代ではFPV(ファーストパーソンビュー)ドローンという、ドローンの視点をゴーグルで体験できるタイプの機器がすでに普及し始めています。これはロケットそうじゅうくんれん機が描いた体験にかなり近いものであり、ドラえもんのひみつ道具の先見性が改めて実感できます。
操縦に注意
宇宙船型のラジコンが何らかの原因でこわれてしまうと、操縦席まで一緒に大爆発する仕掛けになっています。
この機能は必要だろうか? ドラえもん13巻「ロケットそうじゅうくんれん機」P99:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄
よりリアルな設計にするための仕掛けなのでしょうが、さすがにそこまでの機能は必要なかったかもしれません。未来の道具なので故障することはないにしても、不慮の事故の可能性も大いにあり、使用者の安全が保障されるわけではないということです。
問題は設置スペース
魅力的なロケットそうじゅうくんれん機ですが、問題は設置するスペースです。操縦席はドラえもんと同じ背丈なので129.3cmほどであることがわかります。のびたの部屋はドラえもんの引き出しから出てきた道具でいつもいっぱいになりがちですが、そこにさらに大型の操縦席が加わるのは家族としても容認しにくい状況です。
立派な操縦席だが、どこに置くべきか。 ドラえもん13巻「ロケットそうじゅうくんれん機」P96:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄
のびたの部屋いっぱいに広がった操縦席。これを一般家庭に設置するのはちょっと無理があります。ゲームセンターや大型施設の筐体として使うにはいいのかもしれません。これがもう少しコンパクトになり、テレビ画面でも楽しめるようになれば理想的ですね。
タケコプターが個人の空中移動を可能にするのに対して、ロケットそうじゅうくんれん機はあくまでも擬似体験型の道具です。快速シューズやはこび矢のような実際の移動系道具とは異なりますが、実際に宇宙に行けない人にとってはこの道具で宇宙体験ができるという意味で、夢の広がる独自のポジションを持っています。
宇宙体験を「訓練」として提供する発想
ロケットそうじゅうくんれん機という名前には「訓練機」という言葉が入っています。ただ宇宙を楽しませるだけでなく、いざ本物のロケットに乗ることになったときのための操縦練習も兼ねている設計思想が感じられます。未来ではロケット旅行が一般化している可能性があり、そのための訓練ツールとして子どもの頃から使えるように作られたのかもしれません。
現代でもフライトシミュレーターは航空機パイロットの訓練に欠かせない道具となっており、ロケットそうじゅうくんれん機はそれの宇宙版と考えることができます。体験しながら実力を磨けるという点では、ゲームを楽しみながらスキルを身につけるという現代のゲーミフィケーションの発想とも重なります。
のびたが宇宙に憧れる理由
勉強も運動も苦手なのびたが宇宙への憧れを持つのは、現実の制約から解放されたいという気持ちの表れかもしれません。宇宙は地球上のルールが通じない場所であり、成績や運動神経が関係ない世界です。宇宙旅行の本を読んで目を輝かせるのびたの姿は、子どもが持つ「違う世界への逃避と冒険心」を体現しています。
ドラえもんがロケットそうじゅうくんれん機を出したのは、「本物は危険だから」という理由からですが、結果的にのびたは擬似体験の中で十分なスリルを味わうことになります。ブラックホールや怪獣から命からがら逃げ回るという体験は、本物の宇宙旅行に勝るとも劣らないドラマチックさです。空とぶワッペンや空飛ぶふろしきといった実際に空を飛べる道具と比べると、ロケットそうじゅうくんれん機は「体は動かないが頭の中では宇宙にいる」という独自の体験を提供しています。
ジャイアンの一撃がもたらした悲劇
ロケットそうじゅうくんれん機のエピソードを語る上で欠かせないのが、ジャイアンがハエたたきでラジコンを潰してしまうというラストです。のびたが宇宙で大冒険を繰り広げている最中、現実世界ではジャイアンが「虫がいる」と思って無造作にハエたたきを振り下ろしてしまいます。宇宙での壮大な体験と、現実の何気ない日常のズレが笑いを生む、ドラえもんらしいオチです。操縦席まで爆発するという仕掛けのせいで、のびたも現実世界でドカンとやられてしまうのがこのエピソードのトドメになっています。ジャイアンという存在がいることで、のびたの夢が現実に砕かれるという構図は、のびたとジャイアンの関係性を象徴するような場面でもあります。どれほど壮大な宇宙体験をしていても、ジャイアンの一振りで全てが終わるというオチは、ドラえもんの短編が持つ「現実は甘くない」という苦味を笑いとともに伝えています。ロケットそうじゅうくんれん機は夢を与えながらも現実に引き戻されるのびたの姿を際立たせる、よくできた舞台装置でもあるのです。
このひみつ道具が印象に残る理由
このひみつ道具の面白さは、ただ便利なだけではなく、使った瞬間に日常の見え方が少し変わるところにあります。ドラえもんの道具は、困りごとを一発で解決してくれるように見えて、実際には使う人の性格や判断がそのまま結果に出ます。のび太が使えば楽をしたい気持ちが前に出ますし、ドラえもんが使えば助けるための道具になります。同じ道具でも、誰がどんな目的で使うかによって印象が変わるのです。
また、名前や見た目が身近であるほど、効果とのギャップが強くなります。普通ならありえないことが、手の届きそうな形の道具で実現してしまう。そこに読者が「自分ならどう使うだろう」と想像したくなる余白があります。物語の中での出番が短くても、発想がはっきりしている道具は記憶に残りやすいですね。
日常で使うなら注意したいこと
もし現実にこの道具を使えるなら、まず考えたいのは周囲への影響です。自分にとって便利でも、家族や友達、近くにいる人に迷惑がかかるなら正しい使い方とはいえません。ドラえもんのエピソードでは、最初は小さな願いから始まった使い方が、だんだん大きな騒動に広がることがよくあります。便利さに気を取られるほど、基本的な確認を忘れてしまうのです。
効果の範囲、持続時間、元に戻す方法、失敗した時の対処。これらを分からないまま使うと、どんなに魅力的な道具でも危険になります。ひみつ道具は夢をかなえるアイテムである一方、使う人に責任を求めるアイテムでもあります。そこまで含めて考えると、単なる便利グッズではなく、未来の技術との付き合い方を教えてくれる存在だといえるでしょう。
読者が想像を広げやすい道具
作中で描かれた使い方は、この道具の可能性の一部にすぎません。学校で使ったらどうなるか、家で使ったらどうなるか、旅行や災害時に役立つのか、逆にどんなトラブルが起きるのか。そう考えていくと、短い登場シーンだけでは見えなかった魅力が広がります。
ドラえもんのひみつ道具紹介の楽しさは、性能を確認するだけでなく、その先の使い道を読者自身が想像できるところにあります。この道具も、便利さ、危うさ、ユーモアが同時に詰まっているからこそ、もっと深く考えたくなる一品です。






