快速シューズ

海底を陸上の数十倍の速度で移動でき、深海の水圧に耐える重りとしても機能する快速シューズ。通常の人間には到底踏み込めない深海の世界を、のびたが歩いて横断するための核心的な道具です。

太平洋横断の重要な役割

夏休みを利用し、太平洋を歩いて縦断する無謀かつ挑戦的な計画を実行するのびた。そんな時にドラミちゃんが用意してくれた道具の1つが快速シューズで、陸上の数十倍の速度で移動することができ、身体を支えるおもりにもなります。太平洋横断計画の肝となる重要な役割のあるひみつ道具といえるでしょう。

快速シューズで歩く
ロマン広がる海底世界

ドラえもん4巻「海底ハイキング」P53:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄

海底を歩くことに特化しているひみつ道具なので、陸上で快速シューズを使っても本来の性能が出せるかどうかは不明です。しかし考えてみると、数十倍の速度で移動できるということは、地上でも相当なスピードが出るはずです。陸上専用の高速移動道具として使えるかもしれませんが、海底という特殊な環境での使用を前提に設計されている道具なので、陸上では未知の挙動をする可能性もあります。

また、おもりとしての機能も重要です。深海は水圧が非常に高く、通常の人間であれば体が浮き上がってしまいます。快速シューズが重りとして機能することで、のびたは深海の底をしっかりと歩くことができます。移動と安定を同時に担う、海底冒険のための特化型道具です。

ちょっと寄り道。ドラミちゃんの謎

この話に登場するのびたはいつになくやる気に満ち溢れ、当時はまだ未知の世界だった海底にも果敢に挑んでいく姿はまるで別人みたいと思えるのは、それもそのはず。実はコミックのドラミちゃんがメインで登場する話は、別雑誌で連載されていたスピンオフ作品だったのです。タイトルもドラミちゃんという名前で連載されていて、ドラえもんのストーリーと繋がるように世界観とキャラ設定を修正され、コミックに収録されているのです。

のびたじゃない

ちなみにこの作品でののびたくんにあたるキャラは、のびたろうという、ドラえもんに登場するのびたの従兄弟という設定のキャラクターです。ドラえもんを追いかけて20世紀に遊びに来たドラミちゃんがのびたろうくんの事を気に入り、そのまま家に押しかける形で居候になるといった感じの流れなんですね。

アクティブなのびた
前人未到のチャレンジ

ドラえもん4巻「海底ハイキング」P49:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄

のびたろうくんも本家ののびたと比べると、見た目と基本的なところは似ていますが、いくらかアクティブになっています。海底を歩いて太平洋を横断しようとする無謀な計画を本気で立てるあたり、のびたとは違う積極性があります。

登場人物も違います

コミック版の初版では、キャラの見た目はドラえもんに修正されているものの、一部でジャイアンをカバ田、しずかちゃんをみよちゃんなどと呼んでいるセリフの修正漏れがあったりします。また、本家のスネ夫的な役回りのズル木は長身メガネと見た目がスネ夫とかけ離れていて、なおかつ金持ち絡みの自慢でなく、普通の嫌味キャラとして描かれています。

ズル木の顔
ひどい言い方である

ドラえもん4巻「海底ハイキング」P48:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄

(修正前のドラミちゃんは藤子・F・不二雄大全集 ドラえもん (20)に修正後の分と一緒に収録されています。)

このスピンオフの歴史を知ると、コミックに収録されたバージョンを読む時に、オリジナルのキャラクター設定を想像しながら読む楽しさが生まれます。修正漏れのセリフはそういった背景を知るための面白い手がかりです。

困難をともにする快速シューズ

さて、話を戻しまして、この快速シューズを使って暗い深海をどんどん進んでいくのびたでしたが、途中で海底火山の爆発というアクシデントに見舞われます。その時に、この快速シューズをはじめとしたひみつ道具一式を失ってしまうんですね。

海底火山の影響を受ける
危機に陥ったのびた

ドラえもん4巻「海底ハイキング」P60:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄

暗い深海に身体一つで放り出されて途方に暮れるのびたでしたが、偶然通りかかった日本の潜水艦にしがみつき、なんとか東京湾まで帰ってくる、最後までハラハラさせる大冒険を繰り広げます。こういった点も通常のドラえもんと違った余韻を残しますよね。

ひみつ道具を失っても何とか生き延びてしまうのびたの生命力と運の強さは、この話でも遺憾なく発揮されています。道具に頼り切るのではなく、最終的には自力でサバイバルするというオチが、ドラミちゃんエピソード特有のアクティブな世界観を作り出しています。

海底冒険に必要な道具たち

快速シューズが活躍する海底ハイキングのエピソードでは、複数のひみつ道具が組み合わさって使われています。水中で呼吸するための道具、深海の水圧に耐えるための道具、そして高速移動のための快速シューズという組み合わせは、現代のダイビング装備の発想とも重なります。

現代のダイビングでは、酸素タンク、耐圧スーツ、フィン(足ひれ)という組み合わせが基本ですが、快速シューズはこのフィンを超えた超高速移動を実現しています。現実のフィンでは水中移動速度は人間の通常歩行速度より少し早い程度ですが、快速シューズは陸上の数十倍というスペックです。現代の水中推進装置(水中スクーターなど)でも最速で時速数kmという水準を考えると、快速シューズの性能は相当なものです。

快速シューズに似たひみつ道具

ドラミちゃんが用意した道具という意味

快速シューズがドラえもんではなくドラミちゃんの用意した道具だという点も、興味深いポイントです。ドラえもんのポケットにも海底探検に関連する道具がいくつか存在するはずですが、このエピソードではドラミちゃんが主役なので、道具の出所も彼女のポケットからになっています。ドラえもんのひみつ道具はほとんどがドラえもん視点で紹介されますが、ドラミちゃんがメインのエピソードでは別の道具の組み合わせが登場し、ひみつ道具の世界の広がりを感じさせてくれます。

ドラミちゃんがのびたろうのために用意した道具という文脈で考えると、快速シューズはいわば借り物の道具です。道具を失った後にのびたが自力で帰還するという展開は、道具に頼りすぎることへの警告とも読めます。ひみつ道具はあくまで助けの道具であり、最後は自分自身の力で乗り越えるという、ドラえもんシリーズ全体を貫くテーマが、このエピソードにも込められています。

快速シューズに似たような道具というと、海底を歩くことができるという点では、大長編のびたの海底鬼岩城に登場するテキオー灯、海底を猛スピードで移動できるという点では同じく海底鬼岩城の水中バギーなどが挙げられます。ただし使えるシーンが海中に限られてしまうため、日常生活においてはなかなかお目にかかれないひみつ道具とも言えるでしょう。

陸上での高速移動という点では四次元三輪車がジェット機並みの速度を出せることが示されており、快速シューズとは活躍する環境が海中と陸上で分かれています。エラチューブが水中での呼吸を可能にして海底移動のサポートをするのに対し、快速シューズは移動そのものの速度と安定性を担うという役割分担ができており、組み合わせることで完全な海底探索が実現します。

また、瞬間移動潜水艦が水中移動の乗り物であるのとは対照的に、快速シューズは自分の足で歩くという体験を重視した道具です。乗り物では感じられない海底の地面を踏みしめる感覚や、周囲の海中世界をじっくり観察できるという点では、快速シューズならではの冒険体験があります。海底を自分の足で歩く、というロマンを実現する道具として、ドラえもんのひみつ道具の中でも独特の存在感を持っている一本です。冒険とロマンを同時に体験させてくれる快速シューズの魅力は色褪せません。

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