土の中で生活しているモグラの前足は土を掘ることに特化していて、ものすごい速さで土の中を掘り進むことができると言います。今回はそんなモグラのように地中を掘り進める「モグラ手ぶくろ」を紹介します。
名前の通り、手にはめるグローブ型のひみつ道具です。これをはめると、土を掘ることに関してモグラ同様の能力を発揮できます。
本編での使われ方
のびたが「タイムカメラ」で町の歴史を撮影していると、最後の写真に写っていたのはなんと昔話でおなじみの「桃太郎」! 同じころ、別の漫画の主人公・バケルくんが助けた外国人が「先祖から受け継がれた絵(写真)?」として出した写真にも桃太郎の姿が写っていました。
この二つの桃太郎の写真の謎を突き止めるべく、のびた、ドラえもん・バケルくんの一行はタイムマシンで室町時代へと向かいます。ところがそこで3人は、現地の村人から鬼の仲間に勘違いされて落とし穴にはまってしまいます。
ネコとモグラのコラボ ドラえもん9巻「ぼく、桃太郎のなんなのさ」P173:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄
自分たちは鬼ではないと言っても村人は聞き入れてくれず、仕方なくドラえもん達は「モグラ手ぶくろ」を使い、落とし穴に横穴を掘って脱出したのでした。
土に絡む話で活躍するモグラ手ぶくろ
今回のストーリーではたった2コマの出番ですが、落とし穴から一行を脱出させ逃がすという重要な役目を果たしてくれました。わずか2コマという短い登場ながら、物語の流れを大きく変える働きをしているのがモグラ手ぶくろの面白いところです。こういった地味だけれども実は重要な役割を担うひみつ道具は、ドラえもんの世界全体を支える縁の下の力持ち的存在とも言えます。
これ以外でもモグラ手ぶくろは違った役目を持って再登場しています。コミック30巻「昔はよかった」で再登場した時は、江戸時代の農民親子の畑を耕すのに使われました。
また、ゲームなどでも重要アイテムとして登場し、やはり穴を掘る役目を持っていました。PCエンジンのゲームでは上位機種に当たる「スーパーモグラ手ぶくろ」も登場します。
もしも現実にあったとしたら
もしも「モグラ手ぶくろ」が現実にあったとしたら、役に立つ場所は、やはり穴を掘るのに特化しているという事で、工事現場でしょう。
工事現場
トンネル工事では山の中をすごいスピードで掘り進み、建築工事でも地下室を掘ったり、道路工事などでもアスファルトを敷くために土を掘ったりなど大活躍です。
穴を掘るというのは人力だと何かと体力が必要となり、重い重機も必要になってきます。それが手ぶくろ一つで出来てしまうのですから、コストも下げる事も可能となります。穴ほり機が大型の乗り物型なのに対して、モグラ手ぶくろは手に装着する小型ツールという点で使い分けができそうです。
農作業
同じ土を掘るといった関係では、農作業でも活躍してくれるでしょう。トラクターなどを使わなくてもすごいスピードで畑が耕せるというのは、農家の人たちに大変喜ばれること間違いなしです。
何しろ広い畑になる作物をあっという間に掘り返してくれますから、収穫の時間も大幅な短縮が見込まれますね。日本の食物自給率が落ちているという現在、思わぬ救世主となってくれるかもしれませんね。
似た道具
似た道具としては、おなじモグラをモチーフとし、やはり穴を掘る道具として大長編での出番が多い「ジェットモグラ」があります。これはモグラの形をしたロボットで、「モグラ手ぶくろ」同様に地面の中をものすごいスピードで掘り進みます。しかし掘っている音も大きく、「のびたの海底奇巌城」ではその音を利用して敵の注意を惹くのに使われました。
またコミック43巻で登場する「もぐらロボット」はやはり穴を掘るための道具ですが、デザインもモチーフも「ジェットモグラ」に酷似しているので、類似商品か、後継機ではないかと思われます。
地底探検車が地中移動に特化した乗り物型であるのに対して、モグラ手ぶくろは手に装着するコンパクトな道具として、別の場面で使いやすい点が魅力です。また本道具と通りぬけフープを組み合わせれば、閉じ込められた状況からの脱出に活用できるでしょう。
バケルくんとのクロスオーバー回で登場
モグラ手ぶくろが登場するエピソード「ぼく、桃太郎のなんなのさ」は、ドラえもんとバケルくんというふたつの人気作品のキャラクターが共演する珍しい話です。藤子・F・不二雄先生のもうひとつの代表作であるバケルくんのキャラクターが自然な形でドラえもんの世界に登場し、タイムマシンで室町時代に飛ぶという冒険を一緒に繰り広げます。この回でモグラ手ぶくろは「落とし穴から脱出する」というまさに道具として理想的な役割を果たしており、地味ながらも物語を動かす重要な一手になっています。
ひみつ道具の中には一度しか登場しないものも多いですが、モグラ手ぶくろはコミック30巻でも再登場を果たしているため、繰り返し使われる定番道具のひとつと言えます。農作業の場面で使われたエピソードは、のびた一行がただ遊ぶだけでなく、過去の人々の生活を手助けするために道具を使うというドラえもんらしい展開で印象に残ります。
スーパーモグラ手ぶくろという上位版も
PCエンジンのゲーム版ドラえもんでは「スーパーモグラ手ぶくろ」という上位版アイテムも登場しています。通常版と比べて掘削速度や耐久性が向上しているとされており、ゲームの進行上では重要なアイテムとして扱われていました。ゲームというメディアならではの派生道具が生まれるのも、ドラえもんのひみつ道具の人気と奥深さを示しているといえます。
現実世界でも掘削技術は日々進歩しており、シールドマシンのような大型機械が地下トンネルを掘り進む様子はモグラ手ぶくろが体現する世界に近づいています。ただし現代技術は巨大で高コストなのに対し、モグラ手ぶくろは一人の人間が手に装着するだけという手軽さが最大の差異です。穴ほり機のような大型掘削道具や地下鉄電車のような地中移動手段と比べても、モグラ手ぶくろの「小さくて使いやすい」というコンセプトは変わりません。
脱出だけでなく潜入にも使える
モグラ手ぶくろの用途は穴から出ることだけではありません。逆に考えると、目標の場所に地中からこっそりアクセスするという「潜入」にも使えます。ジャイアンの部屋の真下から穴を掘って侵入したり、塀の向こう側にある果物を地中ルートで取りに行ったり、のびたが考えそうな使い道は無限に広がります。もっとも、ドラえもんはそういった悪用にはきっと首を縦に振らないでしょうが。地中という見えない空間を自由に移動できる能力は、地上での行動制限を受けない点でも魅力的です。防壁も柵も関係なく移動できるモグラ手ぶくろは、考えれば考えるほど活用シーンが広がる可能性を持ったひみつ道具です。
このひみつ道具が印象に残る理由
このひみつ道具の面白さは、ただ便利なだけではなく、使った瞬間に日常の見え方が少し変わるところにあります。ドラえもんの道具は、困りごとを一発で解決してくれるように見えて、実際には使う人の性格や判断がそのまま結果に出ます。のび太が使えば楽をしたい気持ちが前に出ますし、ドラえもんが使えば助けるための道具になります。同じ道具でも、誰がどんな目的で使うかによって印象が変わるのです。
また、名前や見た目が身近であるほど、効果とのギャップが強くなります。普通ならありえないことが、手の届きそうな形の道具で実現してしまう。そこに読者が「自分ならどう使うだろう」と想像したくなる余白があります。物語の中での出番が短くても、発想がはっきりしている道具は記憶に残りやすいですね。
日常で使うなら注意したいこと
もし現実にこの道具を使えるなら、まず考えたいのは周囲への影響です。自分にとって便利でも、家族や友達、近くにいる人に迷惑がかかるなら正しい使い方とはいえません。ドラえもんのエピソードでは、最初は小さな願いから始まった使い方が、だんだん大きな騒動に広がることがよくあります。便利さに気を取られるほど、基本的な確認を忘れてしまうのです。
効果の範囲、持続時間、元に戻す方法、失敗した時の対処。これらを分からないまま使うと、どんなに魅力的な道具でも危険になります。ひみつ道具は夢をかなえるアイテムである一方、使う人に責任を求めるアイテムでもあります。そこまで含めて考えると、単なる便利グッズではなく、未来の技術との付き合い方を教えてくれる存在だといえるでしょう。
読者が想像を広げやすい道具
作中で描かれた使い方は、この道具の可能性の一部にすぎません。学校で使ったらどうなるか、家で使ったらどうなるか、旅行や災害時に役立つのか、逆にどんなトラブルが起きるのか。そう考えていくと、短い登場シーンだけでは見えなかった魅力が広がります。
ドラえもんのひみつ道具紹介の楽しさは、性能を確認するだけでなく、その先の使い道を読者自身が想像できるところにあります。この道具も、便利さ、危うさ、ユーモアが同時に詰まっているからこそ、もっと深く考えたくなる一品です。



