フラフープのような輪っかの形をしたひみつ道具で、壁などに取り付けると向こう側に通り抜けられる穴を作り出してくれます。それが「通りぬけフープ」です。
もしもどこかに閉じ込められてしまった時、脱出するにはどうすればいいのでしょうか? もしも壁を抜けて脱出することが出来たら…今回はそんなひみつ道具「通りぬけフープ」を紹介しますよ。
通りぬけフープとは
フラフープのような輪っかの形状をしたひみつ道具です。通りぬけフープを壁などに付けると、壁の向こう側に通り抜けられる穴を作り出してくれます。
効果は壁に貼り付けている限り有効で、通り抜けてフープを外してしまえば壁の穴は消えて元の壁に戻ります。
通りがかりの人がビックリするのも無理はない ドラえもん9巻「通りぬけフープ」P48:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄
一応どんな壁でも抜けられますが、通りぬけられる壁の厚さの限界などは不明です。劇場版オリジナル作品として登場した時は、通常より大きいLLサイズのものが登場したり、22世紀までに存在している物質ならすべて通り抜けられるという設定が付けられました。
本編での使われ方
いたずらをし過ぎてママに物置に閉じ込められてしまうのびた。物置の中で泣き叫ぶのびたを、ドラえもんが通りぬけフープを使って助け出します。その後ののびたは、通りぬけフープを使って閉じ込めたママにちょっとした仕返しをしたり、大きな犬に追いかけられる子犬を逃がしたりなどして遊んでいましたが、坂道に差し掛かり、フープが勝手に転がりだしてどこかに行ってしまいます。
この激突は痛いはず ドラえもん9巻「通りぬけフープ」P48:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄
慌てて追いかけて探す二人でしたが、なかなか見つかりません。それでも探していると道端の穴から声が聞こえてきます。ドラえもんがロープを垂らしてみるとそこからは沢山の人たちが…。それはフープが道端に転がってできた穴に落ちてしまった人達でした。
大活躍する道具へと出世
通りぬけフープといえば、ドラえもんのひみつ道具の中でも上位にくるほど名が知れたものの1つに数えられます。そんな有名な道具が初登場する今回の話ですが、この話自体は実にシンプルでページ数も少なく、オチも他の話と比べるとかなり普通です。しかも単行本収録版はカラー原稿を強引に白黒に描き直したトレス原稿なので、作画も異様に歪んでいたりします。地味な初登場回とは対照的に、大長編での活躍を経て通りぬけフープはどこでもドアと並ぶドラえもんの看板道具に成長しました。初登場時の控えめな描写と後の大活躍のギャップが、この道具の魅力をより際立たせています。
しかし、道具の使い方が簡単な上に使い勝手も非常にいいので、この後も何度も再登場を果たし、どこでもドアなどと並んで有名な道具となりました。
特に道に迷ったり閉じ込められるシーンが多い大長編では脱出を図る道具として大活躍しています。おそらくドラえもんの道具で「脱出のための道具」と言われると、真っ先にこの通りぬけフープが思い浮かぶ人も多いのではと思います。
似たような道具
似たような道具として挙げられるのは、藤子・F・不二雄大全集3巻に登場する「かべぬけき」があります。手にはめるドリル状の形をしていて、壁などを通り抜けます。通った後の穴が自動的にふさがるのも似ていますね。
ちなみにドラえもんはこれを使って人間の身体もすり抜ける荒業を見せていました。
大長編「のびたとブリキの迷宮」には「抜け穴フープ」なるものが登場しますが、本家の通りぬけフープと比べるとやや小さめで色がカラフルになっています。
他の藤子作品でも似たような道具が登場します。キテレツ大百科では「かべぬけ服」という道具が登場します。これは原子と原子の間をすり抜けられる布で作られる服で、着る事で壁を抜け出す事ができます。話の中では皆が防空壕の中で地震にあって生き埋めにさせられた時に、これを使って助けるのに役立っていました。
穴ほり機が物理的に地面を掘って通路を作るのに対して、通りぬけフープは既存の壁を一時的に通り抜け可能にするという全く異なるアプローチです。空間ひんまげテープとともに、空間や障壁を操作する系統のひみつ道具として興味深い比較対象となります。
物置に閉じ込められるのびたの日常
通りぬけフープのデビューエピソードは、のびたがママに物置に閉じ込められるという場面から始まります。のびたがいたずらをしてこうした罰を受けるのはドラえもんの世界では定番のシチュエーションで、読者に親しみやすい導入となっています。物置に閉じ込められた状況を脱出する道具として通りぬけフープが登場するという設定は、「この道具が何のために使えるか」を読者に直感的に理解させる見事な演出です。
フープが転がり続けるというトラブル
通りぬけフープのエピソードで笑えるのは、フープが坂道で転がり出してしまい、街中に次々と穴を作り続けるという展開です。フープが壁に当たるたびに穴が開いてしまうため、通りかかった人たちが次々と穴に落ちてしまいます。道具が意図せず動き続けてトラブルを引き起こすというのはドラえもんのエピソードの定番パターンですが、通りぬけフープの場合は「フープが転がる」という物理的に想像しやすいシチュエーションが笑いをより身近にしています。
最終的に穴に落ちた人たちをドラえもんがロープで助け出すというオチも、道具の後始末の大変さをコメディとして描いており、ひみつ道具には使用後の管理が大切だというメッセージが込められています。
大長編での脱出道具としての活躍
通りぬけフープは短編でのデビュー後、大長編での活躍が特に印象的なひみつ道具です。敵に閉じ込められたり、脱出口のない場所に追い詰められた場面で、通りぬけフープを壁に当てて出口を作るという使い方は何度も繰り返されます。どんな壁でも通り抜けられるという特性は、密室状況という大長編の定番ピンチを解決する最適な道具であり、読者も「あ、通りぬけフープがある!」と安心感を覚えるほどの定番ポジションを確立しています。
フープを外せば穴が塞がるという仕様は、壁に永久的なダメージを与えないという点でも理想的です。脱出後に使用した痕跡が残らないため、追ってきた敵がどこから逃げたかわからなくなるという二次的な利点もあります。モグラ手ぶくろが地中に穴を掘る道具であるのに対し、通りぬけフープは地上の壁を一時的に無効化するという対照的なアプローチで、どちらも閉じ込められた状況からの脱出に使える点が共通しています。
LLサイズという派生バージョン
劇場版では通常より大きいLLサイズの通りぬけフープが登場します。サイズが大きくなることで通り抜けられる穴も大きくなり、複数人が一度に通れるようになります。大長編では複数のキャラクターが一緒に行動することが多いため、LLサイズはより実用的な選択肢です。さらに22世紀までに存在している物質ならすべて通り抜けられるという設定も加わり、通りぬけフープのスペックが短編登場時より格段に強化されています。こうした「道具の進化」もドラえもんの世界観の奥深さを感じさせる要素のひとつです。
このひみつ道具が印象に残る理由
このひみつ道具の面白さは、ただ便利なだけではなく、使った瞬間に日常の見え方が少し変わるところにあります。ドラえもんの道具は、困りごとを一発で解決してくれるように見えて、実際には使う人の性格や判断がそのまま結果に出ます。のび太が使えば楽をしたい気持ちが前に出ますし、ドラえもんが使えば助けるための道具になります。同じ道具でも、誰がどんな目的で使うかによって印象が変わるのです。
また、名前や見た目が身近であるほど、効果とのギャップが強くなります。普通ならありえないことが、手の届きそうな形の道具で実現してしまう。そこに読者が「自分ならどう使うだろう」と想像したくなる余白があります。物語の中での出番が短くても、発想がはっきりしている道具は記憶に残りやすいですね。
日常で使うなら注意したいこと
もし現実にこの道具を使えるなら、まず考えたいのは周囲への影響です。自分にとって便利でも、家族や友達、近くにいる人に迷惑がかかるなら正しい使い方とはいえません。ドラえもんのエピソードでは、最初は小さな願いから始まった使い方が、だんだん大きな騒動に広がることがよくあります。便利さに気を取られるほど、基本的な確認を忘れてしまうのです。
効果の範囲、持続時間、元に戻す方法、失敗した時の対処。これらを分からないまま使うと、どんなに魅力的な道具でも危険になります。ひみつ道具は夢をかなえるアイテムである一方、使う人に責任を求めるアイテムでもあります。そこまで含めて考えると、単なる便利グッズではなく、未来の技術との付き合い方を教えてくれる存在だといえるでしょう。
読者が想像を広げやすい道具
作中で描かれた使い方は、この道具の可能性の一部にすぎません。学校で使ったらどうなるか、家で使ったらどうなるか、旅行や災害時に役立つのか、逆にどんなトラブルが起きるのか。そう考えていくと、短い登場シーンだけでは見えなかった魅力が広がります。
ドラえもんのひみつ道具紹介の楽しさは、性能を確認するだけでなく、その先の使い道を読者自身が想像できるところにあります。この道具も、便利さ、危うさ、ユーモアが同時に詰まっているからこそ、もっと深く考えたくなる一品です。




