ゆうどうミサイルは、一度ターゲットを決めるとどこまでも追いかける、しつこさが売りのひみつ道具です。ゆっくり飛ぶ頼りなさと、最終的には逃げ切れない怖さの落差が面白い道具です。
カナリアを食べた猫への仕返し
ゆうどうミサイルが登場するのは、コミック12巻のミサイルが追ってくるです。しずかちゃんの大切なカナリアを食べてしまった野良猫をこらしめるため、ドラえもんがこの道具を出します。
ミサイルと聞くと強烈な兵器を想像しますが、作中のゆうどうミサイルはかなりゆっくり飛びます。頼りなさそうに見える一方で、一度狙った相手をどこまでも追い続けるため、逃げる側にとってはかなり厄介です。
ミサイルにしては頼りない飛び方 ドラえもん12巻「ミサイルが追ってくる」P7:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄
この道具の怖さは速度ではなく持続力です。速い攻撃なら一瞬で終わりますが、ゆうどうミサイルはじわじわ追ってきます。見えているのに逃げ切れない、いつか当たるとわかっている。この心理的な圧迫感がかなり強いです。
ジャイアンを狙ったはずが
次の標的になるのはジャイアンです。のび太が道を歩いていると、空き地で野球をしていたジャイアンのボールが頭に当たります。しかもジャイアンは謝るどころか、のび太を責めるような言い方をします。
怒ったのび太は、ゆうどうミサイルでジャイアンを狙います。ジャイアンは家に逃げ込むなど、あの手この手でミサイルから逃げようとします。普段は強気なジャイアンが、追われる側になるのがこの話の見どころです。
ジャイアニズム、発動 ドラえもん12巻「ミサイルが追ってくる」P9:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄
ただし、最後はのび太がハチに刺されて顔を腫らし、ジャイアンそっくりになってしまいます。その結果、ミサイルはのび太をジャイアンと誤認して追いかけ始めます。仕返し道具が自分に返ってくる、ドラえもんらしいオチです。
いくらなんでもジャイアンに似すぎ ドラえもん12巻「ミサイルが追ってくる」P13:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄
目視認識の弱点
ゆうどうミサイルは、一度狙うとどこまでも追うとされています。しかし、のび太をジャイアンと間違える描写から見ると、対象をかなり見た目に頼って認識しているようです。
未来のミサイルにしては、顔が似ただけで誤認するのは頼りないです。体格、声、位置情報、におい、熱源などを組み合わせれば、別人を追うミスは減らせそうです。あえて簡単な識別にしているなら、子ども向けの玩具に近い道具なのかもしれません。
同じ追跡系の道具にはにおいついせき鼻や郵便逆探知機のように、相手の居場所を探す方向のものがあります。ゆうどうミサイルは探すだけでなく実際に追突するため、追跡と攻撃が一体になった道具です。
ただし、速度が遅いことは安全装置とも考えられます。高速で飛べば本物の兵器になりますが、ゆっくりなら逃げる時間があり、ギャグとして成立します。怖いけれど致命的ではない、この加減がドラえもんの道具らしいです。
ジャイアンの言い分がひどい
のび太がジャイアンを標的にした理由は、かなりわかりやすいです。ボールをぶつけておいて謝らず、のび太の歩き方が悪いと責める。いつものジャイアンらしい横暴さが出ています。
この場面だけ見ると、のび太が仕返ししたくなる気持ちもわかります。もちろんミサイルで追いかけるのはやりすぎですが、原因を作ったのはジャイアンです。読者としては、少し痛い目を見ても仕方ないと思ってしまう場面です。
しかしドラえもんの話では、仕返しがそのまま気持ちよく成功することはあまりありません。今回も、ミサイルは最後にのび太へ向かってきます。道具で相手をこらしめようとすると、自分にも返ってくる。この教訓がきれいに入っています。
現実にあったら迷惑すぎる道具
ゆうどうミサイルが現実にあれば、防犯や害獣対策に使えそうに見えます。危険な相手を追い払ったり、逃げた対象を追跡したりできるからです。
しかし、誤認識の問題がある以上、実用にはかなり不安があります。似た顔の別人を追ったり、途中でターゲットを見失ったり、建物や車にぶつかったりすれば大きな事故になります。ゆっくり飛ぶとはいえ、ミサイルという名前の道具を街中で使うのは危険です。
似た攻撃道具の空気砲は使う瞬間に狙いを定めますが、ゆうどうミサイルは発射後も追い続けます。手を離れた後に道具が勝手に判断するため、使う側の責任も重くなります。
しつこさが魅力のギャグ道具
ゆうどうミサイルは、強い道具というよりしつこい道具です。ゆっくり、頼りなく、でもずっと追ってくる。そのギャップが笑いになります。
ジャイアンが逃げ、のび太が顔を腫らし、最後に自分が追われる。この流れは、道具の性質を使ったきれいな因果応報です。仕返ししたい気持ちはわかるけれど、ミサイルまで使うとやりすぎになる。そこをギャグで見せてくれます。
ゆうどうミサイルは、物騒な名前に反してどこか間の抜けた道具です。それでも狙われる側に回るとかなり怖い。ドラえもんの攻撃道具らしい、怖さとおかしさが同居した一本です。
遅いからこそ逃げ場がない
ゆうどうミサイルは、速さだけで見ればそれほど強そうに見えません。走れば逃げられそうですし、曲がり角を使えばまけそうにも見えます。けれども、作中では標的をあきらめずに追い続けます。この遅さとしつこさの組み合わせが独特です。
速い攻撃なら、当たるか外れるかが一瞬で決まります。ゆうどうミサイルはその逆で、結果が先延ばしになります。逃げている間ずっと、背後から追ってくるものを意識し続けなければなりません。心理的にはかなり消耗する道具です。
ジャイアンが逃げ回る場面も、この性質があるから面白くなります。普段は相手を追い詰める側のジャイアンが、ゆっくり迫るミサイルに追われる。力ではどうにもならない相手を前に、強気な態度が崩れていくわけです。
ただ、標的を間違える弱点がある以上、使用者も安全ではありません。発射した後に道具が勝手に判断し続けるため、途中で状況が変わると事故につながります。のび太が最後に追われるオチは、単なる偶然の笑いではなく、追跡道具を軽く使う危うさをそのまま示しています。
この道具は、仕返しの気持ちを形にしたような存在です。すぐに相手を倒すのではなく、相手が困る様子を長く見せる。そこに、のび太の小さな怒りや意地悪さがよく出ています。ジャイアンにやられっぱなしの鬱憤が、ゆっくり追うミサイルという形で表れているようにも見えます。
しかし、仕返しは相手だけを傷つけて終わるとは限りません。のび太が顔を腫らしただけで標的が入れ替わるように、状況は簡単に変わります。怒っている時ほど、その後の変化まで考えられません。ゆうどうミサイルは、怒りの勢いで道具を使う怖さをかなりわかりやすく示しています。
ミサイルという言葉の物騒さに対して、飛び方が頼りないのも良いバランスです。本当に恐ろしい兵器として描くのではなく、ギャグとして読める速度に抑えている。それでも追われる側の焦りは伝わるため、怖さと笑いの両方が成立しています。
標的の認識方法があいまいな点も、話を面白くしています。顔が似ただけで追う相手が変わるなら、ミサイルは本人そのものではなく、見た目の特徴を追っている可能性があります。未来道具としては弱点ですが、ギャグの仕掛けとしてはかなり便利です。
のび太が最後に追われることで、読者の気持ちも少し引き戻されます。ジャイアンが悪いから仕返ししてよい、という単純な話では終わりません。やり返したい気持ちは理解できても、ミサイルを使えば度を越します。その線引きを、説教ではなく追跡劇のオチで見せています。
ゆうどうミサイルは、派手な爆発よりも追われる時間で怖さを作る道具です。逃げる側の焦りが続くほど、見た目の頼りなさが逆に不気味になります。そこがこの道具の個性です。強い余韻があります。





