タイムシーバー

タイムシーバーは、未来の世界にある古道具店ちん品堂に電話注文するための道具です。時間を越えて注文することができるため、のび太の世界からでも注文可能です。

古いものが大人気の未来世界

二十二世紀の未来では古い家具や電化製品が大人気なのだそうです。昔の道具を販売するちん品堂に電話注文するための道具がタイムシーバーです。

未来の世界で古道具のコレクションが流行していることに目をつけたドラえもんは、タイムシーバーを使ってちん品堂にオーダーしようと提案しました。

古いものへの自慢

いつものスネ夫の自慢から始まるストーリー。趣味で集めているアンティーク品を見せられたのび太は、自分も古い道具が欲しいとドラえもんにねだります。家のテレビを10年使っているとはいっても、いくらなんでもそれはアンティークとはいえませんよね。そこでドラえもんが取り出したひみつ道具がタイムシーバーです。

二十二世紀の未来で古道具のコレクションが流行していることに目をつけたドラえもんは、タイムシーバーを使ってちん品堂にオーダーしようと提案しました。

コミック1巻という連載初期のエピソードで、ドラえもんの世界観がまだ確立する途中の時期に描かれた話です。22世紀の未来で現代の家電がアンティークとして珍重されるという発想は、なんともシニカルな視点で現代文明を相対化していて、藤子先生の社会観察の鋭さを感じさせます。

物々交換

とはいうものの、ドラえもんの少ないお小遣いで古道具を買い揃えるのはできないので、のび太の家にある家具や電化製品を物々交換してもらおうと考えます。

交換したものは、例えば次のようなものがあります。

  • ラジオ→鉱石ラジオ
  • 洋服→着物→中世の鎧→石器時代の服→葉っぱ1枚
  • 洗濯機→洗濯板
  • タンス→古いタンス
  • 電話→昔の電話
  • 水道→井戸
  • 家→ワラ葺き家

ちん品堂はのび太の身の回りにあるものを次々と古道具に取り替えていきます。のび太の所有物ではない車や、警察官の制服まで取り替えてしまったのはちょっとやりすぎかもしれません。

異変に気付いたドラえもんはタイムシーバーで全てのオーダーをキャンセルしてしまいました。

意外と良心的?なちん品堂

アンティーク品として価値が出るためには、珍しさや流通している数、コンディションが関係します。鉱石ラジオなんてけっこう珍しい部類に入ると思いますが、それを惜しげもなく普通のラジオと交換してくれるちん品堂は良心的なお店なのかもしれません。

中世の鎧も立派なものですし、本来はお金を出して買わなければならないアンティーク品なのに、物々交換で対応してくれるのは嬉しいポイントですね。

どうして自分たちで買いに来ないのか?

ところで、未来の人はわざわざちん品堂を介さなくても、自分たちがタイムマシンを使って昔の世界に来れば、簡単に古道具を手に入れることができるはずです。どうして彼らは自分たちで買いに来ないんでしょうか?

これはあくまでも推測にすぎませんが、次のような理由が考えられます。

  • 通貨の問題
  • 個人の時間旅行が制限されてしまった

通貨の問題

今と未来で使っている通貨が異なる可能性が考えられます。現代でさえ電子マネー決済やカード決済が増えているので、二十二世紀はもっと効率的な精算方法が導入されている可能性があります。未来の人たちは現金を持っていない可能性もあり、昔の世界に来たとしても交換するための貨幣がないため、自分たちで買いに来ないと考えられます。

個人の時間旅行が制限されてしまった

タイムパラドックスや歴史改変の問題が大きくなり、未来の世界で個人の時間旅行が制限されてしまった可能性が考えられます。そうするとドラえもんが過去に来ていることも問題になるはずですが、何らかの理由で見逃されているのかもしれません。あくまでも予想ですけどね。

ちん品堂のビジネスモデルを考える

ちん品堂という古道具店の存在自体が非常に興味深いです。22世紀の未来に存在するショップが、現在の時代に電話注文を受け付けて物を届けるというシステムを持っているということは、時代を越えた物流インフラが整備されていることを意味します。

タイムシーバーがなければのび太たちはちん品堂に注文できないわけですが、逆に言えばタイムシーバーというアクセス手段があって初めてちん品堂というビジネスが成立します。タイムシーバーはその名の通り、時間を越えた受信機として機能していて、未来のサービスを現在の利用者に届けるインターフェースです。

タイムシーバーとちん品堂の関係は、スマートフォンとアプリストアの関係に似ています。端末があってはじめてサービスにアクセスできる、という構造です。22世紀の技術が生み出した時代を越えた商取引のエコシステムとして、なかなか面白い設計になっています。

うまく使えば大金持ち?

タイムシーバーに限ったことではありませんが、うまく使いこなすことで莫大な資産を作れる可能性もあります。のび太の世界で家具や家電を安く大量に仕入れ、それを未来の世界に販売すればいいんです。

もしくは、ドラえもんたちが少し昔の世界に行ってアンティーク品を大量に買うとか、いくらでも方法は考えられますね。

ドラえもんは子ども向けの漫画なので、あまり現実的に考えすぎるのはよくありません。夢が広がるストーリーと捉えておきましょう。

未来の世界はあまり便利じゃなさそうかも

道具が古すぎて普通の生活ができなくなったドラえもん・のび太は、急いでちん品堂に物々交換したものを返してほしいとお願いします。ところがすでに未来の世界で売れてしまったようで、それらを買い戻すまでの間、未来の家具、家電を使ってほしいと言われてしまいます。

奇抜な服装、自動掃除機、自動コーヒー飲み機、自動タバコ吸い機など、未来の技術で作られた家具・家電はあまり便利そうには見えません。

ひみつ道具のタイムシーバー
こんな未来なら来てほしくない

ドラえもん1巻「古道具きょう争」P81:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄著

なんでもかんでも機械任せというのも考えものですね。

タイムシーバーが描く未来社会のビジネス

タイムシーバーというひみつ道具は、単なる通信機器というよりも、時代を越えた物品取引を可能にするビジネスツールとして機能しています。現代でもインターネット通販が当たり前になっていますが、タイムシーバーはそれを時間軸方向に拡張したものと考えられます。注文すれば遠隔地から商品が届くという通販の概念を、時間を越えたやりとりにまで拡張しているわけです。

ちん品堂が物々交換で対応しているという点も興味深いです。未来の通貨が現代では使えないという問題を、物々交換というシステムで解決しているのは合理的です。現代の物が未来では希少価値を持つという非対称性を巧みに利用したビジネスモデルで、双方にメリットがある取引を実現しています。

タイムシーバーは同じ時間系の道具であるタイムマシンタイムテレビと比べると、過去や未来に実際に移動したり映像で確認したりするのではなく、あくまでも注文という形で時代を越えたやりとりをするのが特徴です。タイムふろしきが物体の時間を操るのとも発想が違い、時代を越えたビジネスという独自の切り口を持った道具です。

似た発想のものとしてタイムカメラがあります。あちらは時間を越えて写真を撮る道具ですが、タイムシーバーは時間を越えて物品を受け取るという方向性の違いがあります。どちらも時間を越えたコミュニケーションという点では共通していて、22世紀の技術が可能にした新しい生活様式を体現しています。

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