手にとり望遠鏡

手にとり望遠鏡は、望遠鏡で見た対象物に手を伸ばすと、それが本当に手元に来てしまう不思議なひみつ道具です。原理の説明はできませんが、手を出せば手に入ってしまうんです。

ヨーヨーを取り返せ

のび太はヨーヨーが下手くそなことを理由に、ジャイアンにヨーヨーを取り上げられてしまいました。どうしても取り返したいのび太がドラえもんに相談したところ登場したのが手にとり望遠鏡です。コミック13巻に収録されているエピソードで、序盤の日常的なやりとりから始まって最後に宇宙規模のオチが待っているという、ドラえもんらしい構成が見事な話です。

これで対象物を覗き込み、倍率を高くして目の前に見えてきたところで手を伸ばすと、本当にその物が手に入るというなんとも不思議な効果があります。

こうしてジャイアンから無事にヨーヨーを奪い返すことに成功したのび太でしたが、手にとり望遠鏡で天体観測をしていて星がキレイとの理由で手を伸ばしたところ、本物の星を取ってしまったというオチで終わりを迎えます。

手にとり望遠鏡で買い物カゴを取るドラえもん
泥棒の瞬間

ドラえもん13巻「手にとり望遠鏡」P16:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄

奪われる側からすると自分のものが突然消えてしまうので大混乱!

なんとかジャイアンから無事にヨーヨーを奪い返すことに成功したのび太でしたが、手にとり望遠鏡で天体観測をしていて星がきれいだとの理由で手を伸ばしたところ、本物の星を取ってしまったというオチで終わりを迎えます。

手にとり望遠鏡で星を取ってしまったのび太
星の表面はデコボコしているようだ

ドラえもん13巻「手にとり望遠鏡」P20:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄

原理が不明

ドラえもんのひみつ道具を原理で説明しようとするとどれも無理がありますが、今回の手にとり望遠鏡もまたその1つです。

望遠鏡の倍率を上げるところまでは理解できても、そこで手を伸ばしたらどれだけ遠くのものでも手元に来るというのは一体どういうことでしょうか?

強いて説明しようとすれば、望遠鏡が一種の空間圧縮装置になっているという考え方もできます。倍率を上げることで対象物との空間的な距離を縮め、手を伸ばすことでその圧縮された空間を通じて物体を取り寄せているとすれば、それなりの理屈になります。もちろん現在の物理学では説明のつかない現象ですが、22世紀の科学ならではの発想なのかもしれません。

距離の不思議

対象物が数メートル先でも数千キロ先でも、手にとり望遠鏡で拡大して見れば距離に関係なく手に入ります。宇宙に浮かぶ星でさえ手が届いたのですでに距離の制限はありません。

重量の不思議

手を伸ばしてつかむ対象物の重さも考慮されていません。

手にとり望遠鏡でおばさんを掴んでしまったのび太
つかまれた側もたまったものじゃない

ドラえもん13巻「手にとり望遠鏡」P17:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄

上の画像ではおばさん(推定体重50kg〜60kg)を片手でつかんでいますし、オチにいたっては巨大な星でさえ捕まえています。

手にとり望遠鏡で物をつかむときは、一時的に物体の重量が無視されるようです。

固定されたものは別

重量が無視されるとはいえ、固定されたものの場合は捕まえることができません。

手にとり望遠鏡で木を掴んで瞬間移動したのび太
なかなか危険な状態である

ドラえもん13巻「手にとり望遠鏡」P17:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄

のび太が誤って木の枝を掴だとき は、のび太の体が木に引っ張られるように瞬間移動してしまったのです。

木は地面に固定されているので、そういう時は自分が移動してしまうようです。

移動時に便利

これを利用すると、たとえば手にとり望遠鏡でビルの屋上を写し出し、手を伸ばして屋上に瞬間移動し、ビルからビルに同様のことを繰り返すだけであちこちを自由自在に移動できますね。

近場でウロウロする時は非常に便利で、移動の概念が根本から変わってしまいそうですね。

ただし、この方法にも欠点があります。固定されたものに自分が引き寄せられるという特性を利用した瞬間移動ですが、目的地の地形をきちんと確認しないと思わぬ場所に飛び込んでしまうリスクがあります。ビルの屋上から別のビルの屋上に移動しようとして、窓ガラスや壁に衝突してしまうかもしれません。これを安全に使いこなすには、事前に移動先をしっかり望遠鏡で確認する慎重さが必要でしょう。

それでも、スポーツなどで近場をウロウロする場面では、手にとり望遠鏡を使った瞬間移動は強力な武器になります。ただしすぐに相手に仕組みを見破られそうなので、実際の競技での使用はルール違反になりそうです。

同じく調査・探偵系の道具としてトレーサーバッジ分析機と組み合わせると、遠くの対象物を取り寄せてその場で成分分析するという使い方もできそうです。またホームズセットとの相性も良く、手が届かない場所の証拠品を回収する場面では活躍するでしょう。正かくグラフのように正確なデータを求める道具と組み合わせれば、遠隔地のサンプルを取り寄せてその場で計測するという本格的な調査ができます。

手にとり望遠鏡が実現する世界

手にとり望遠鏡が現実に存在したら、世界は根本から変わるでしょう。遠隔地の物品を即座に入手できるということは、物流という概念が消滅します。注文した商品が瞬時に届く世界では、宅配業者も倉庫も不要になります。

もちろん逆に言えば、自分の持ち物が他人に取り上げられるリスクもあります。コミックの中でジャイアンがヨーヨーを持っているところを望遠鏡で覗かれて奪い取られてしまったように、所有という概念自体が揺らぐかもしれません。

天体観測の分野での活用は特に革命的です。どれだけ遠い星でも望遠鏡で見えれば手に取れるわけですから、宇宙探査の手間が劇的に短縮されます。月の石や火星のサンプルを採取するのに何年もかけてロケットを飛ばす必要がなくなります。ただし、コミックのオチのように惑星そのものを取ってしまう危険性もあるので、使用時には細心の注意が必要でしょう。

道具の原理は謎のまま残されていますが、それがかえってドラえもんらしさでもあります。説明できない不思議な力を自然に受け入れて、その先の展開を楽しむというのが、ドラえもんのひみつ道具との付き合い方なんですね。

コミック13巻という時期に注目

手にとり望遠鏡が登場するコミック13巻は、ドラえもんの連載がある程度軌道に乗り、様々な道具が出尽くした感のある時期です。それでもこのエピソードが新鮮に感じられるのは、道具のアイデアの斬新さもさることながら、のび太とジャイアンの関係性やのび太の失敗というお馴染みの展開が上手く組み合わさっているからでしょう。

ヨーヨーという当時子どもに流行していた遊び道具を物語の起点にしているのも巧みです。読者が共感しやすい日常的なアイテムから始まって、最後は宇宙規模の出来事で終わるという落差が、このエピソードの魅力です。手にとり望遠鏡という道具の可能性を、日常の小さな悩みから宇宙の果てまで一気に広げて見せる展開は、藤子先生の構成力の高さを感じさせます。

星を取ってしまったというオチは笑えますが、実は宇宙への影響を考えると恐ろしい話でもあります。星の位置が変われば重力バランスが崩れ、周辺の惑星の軌道に影響が出る可能性もあります。ドラえもんの世界ではそういった細かいリアリティよりも、夢とユーモアを優先するという割り切りが徹底されていて、それが長く愛され続ける理由のひとつでもあります。

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