自分の代わりに宿題を片付けてくれる嬉しいひみつ道具、宿題をやるロボット。正式名称は登場しないため管理人が名前をつけていますが、コミックに登場するロボットの中でもその存在感は底流たりないものがあります。
スネ夫の策略にはまったドラえもん
スネ夫がドラえもんを言葉たくみに騙して借りた友情カプセルとコントローラーを悪用し、まんまとドラえもんと友達(手下みたいなもの)になりました。親友の頼みは断れないということで、ドラえもんはスネ夫の願いを叶えるため次々とひみつ道具を出し始めるのです。
スネ夫にとっての親友とはいったい ドラえもん4巻「友情カプセル」P96:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄
ドラえもんをドラ焼きで釣り、スネ夫の頼みを断りづらい状況を作ったこと、もっともらしいストーリーを組み立てて友情カプセルを借りたこと、自分の欲望のままにドラえもんをこき使うこと。これらの点から考えても、スネ夫は小学生の段階でかなりの策略家であることがわかります。そんな状況を利用してスネ夫がドラえもんに出させたひみつ道具の1つが宿題をやるロボットだったのです。
このエピソードが面白いのは、のび太ではなくスネ夫がドラえもんにひみつ道具を出させているという点です。普段はのび太がメインで道具を使いますが、このエピソードはスネ夫の策謀がきっかけになっているため、物語のトーンが少し違います。スネ夫がいかに計画的に動いているかがよくわかるエピソードで、ドラえもんファンの間でも印象的な話として記憶されている方が多いのではないでしょうか。
メカメカしいデザイン
健気なロボットがかわいそう ドラえもん4巻「友情カプセル」P96:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄
どうでしょう、いかにもロボットらしい雰囲気をしたこの様子。未来のロボットなので、宿題なんていとも簡単に解いてしまうのでしょう。ちゃんとイスに座っている、エンピツを握って書いている、「セッセ、セッセ」ともくもくと取り組んでいる、その全てがなんとも可愛げなロボットに見えてきます。
よく見ると、このロボットはかなり人間的な所作で宿題に取り組んでいます。椅子に座り、鉛筆を握り、ノートに書き込む。その動作は人間の子供そのものです。未来の道具なのに、わざわざ人間と同じやり方で宿題をするというのが、なんとも愛らしい設計思想だなと感じます。机に向かう姿勢が整っているあたり、宿題のやり方そのものも学習済みなのかもしれません。
コンピューターペンシルもあるよ
宿題を解くひみつ道具といえばコンピューターペンシルが最も有名ではないでしょうか。
スラスラ自動的に答えを書いてくれるので、テストや試験で大助かりのひみつ道具ですね。コンピューターペンシルは持ち運びが簡単で、どこでも使えるという汎用性の高さが魅力です。一方で宿題をやるロボットは机に向かって独立して作業できるという点で、違う種類の便利さがあります。
スネ夫に頼まれてドラえもんが出した道具が、どうしてコンピューターペンシルではなく、宿題をやるロボットだったのでしょうか。それはおそらく、スネ夫の性格にあったのではないかと推察されます。スネ夫は自分の力を使わず、ロボットやひみつ道具の力を使って自分の欲を満たそうと考えています。人の力が必要か、それとも全自動で全てを任せることができるか、両者の違いはここにあるのでしょう。
コンピューターペンシルは使う人間がペンを動かすという動作が必要ですが、宿題をやるロボットはロボット自身が全部やってくれます。スネ夫が求めていたのは、自分が何もしなくても宿題が完成するという完全な外注だったわけで、そういう意味では宿題をやるロボットの方がスネ夫のニーズにぴったり合っていたといえます。
笑顔でスネ夫を読すドラえもん ドラえもん4巻「友情カプセル」P96:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄
見られるのはここだけ
かなり力を入れてデザインされたであろう宿題をやるロボットですが、残念ながらコミックで登場するのはわずか1シーンのみ。イスに座っているため、体の下半分が机の影に隠れてしまい、全身を見ることすらできません。どんな機能を持つロボットなのか、コミックを読んでいる小学生が想像を膨らませる余地がある道具でもあります。
もし宿題をやるロボットが単独のエピソードとして深掘りされる機会があれば、どんな宿題まで対応できるのか、科目による得意不得意はあるのか、答えを間違えることはないのかなど、気になる疑問がたくさんあります。ロボットが書いた宿題を先生がどう評価するのか、字の癖がロボットっぽくなって先生に気づかれないのかなども、考え始めると止まらないのがこの道具の面白さです。
なく子なぐさめ機やロボットのおになど、ロボット・自動化系の道具は他にもありますが、宿題をやるロボットはその可愛らしいビジュアルと短い登場シーンのギャップが印象的です。またかかしロボットやもちつきロボットのように特定の作業に特化したロボット系道具も複数あり、ドラえもんの世界ではロボットがさまざまな場面で活躍していることがわかります。宿題をやるロボットもその一員として、短い登場シーンながら強く印象に残る道具のひとつです。
宿題をやるロボットへの考察
宿題をやるロボットが実際にどこまでの宿題をこなせるのかは気になります。算数や漢字の書き取りなど、決まった答えがある課題は得意そうですが、読書感想文や自由研究のような創造性が求められる宿題はどうでしょうか。22世紀のロボットですから、AIとしての判断能力も相当高いはずで、創作系の課題もそれなりにこなせるのかもしれません。
ただ、ロボットが書いた文章には個性や体験が反映されないため、先生が読んだときに違和感を覚える可能性があります。いくら正確に書けても、その子らしさが感じられない文章は、かえって怪しまれてしまうかもしれません。コンピューターペンシルも同じ問題を抱えていますが、宿題をやるロボットの場合は作業そのものを全て委託できる分、より根本的な問いを投げかけます。
そもそも宿題は自分でやることに意味があるわけですが、のび太の世界ではひみつ道具の助けを借りることへの倫理的な問いはあまり深追いされません。それはコミックがエンターテインメントだからということもありますが、道具に依存することへのユーモラスな批評が底流にある気もします。宿題をやるロボットという道具の存在そのものが、学ぶということの意味を問い直しているような、そんな奥行きがあるのです。
スネ夫に使われるという皮肉
宿題をやるロボットがのび太のためではなくスネ夫のために使われたという点は、このエピソードをより味わい深くしています。ドラえもんの道具は本来のび太を助けるために存在するわけですが、友情カプセルでドラえもんを友達にしてしまったスネ夫が、その友達関係を利用して宿題をやるロボットを引き出したという構図は、ドラえもんの道具が意外な形で使われる例として印象的です。
スネ夫が策略を使ったとはいえ、友達の頼みを断れないというドラえもんの性格が悪用された形でもあります。ドラえもんが道具を渡すのはのび太への愛情があるからで、それ以外の人に対してはある種の義理が発生した場合に限られます。スネ夫が作り出した義理の友情という関係を通じてひみつ道具を手に入れた巧みさは、小学生とは思えない計画性の高さがあります。
このエピソードはスネ夫の策略と宿題をやるロボットという道具が組み合わさることで、通常ののび太中心の話とは異なるトーンのエピソードになっています。道具がどんな文脈で使われるかによって、同じ道具でも全く違う印象になるということを、この一話は示しています。宿題をやるロボットが記憶に残りやすいのは、それがのび太ではなくスネ夫のためのものだったという意外性があるからかもしれません。






