狙ったターゲットにこっそり落書きできるらくがきじゅうは、バレずにじわじわとダメージを与えられるユニークな報復道具です。スコープに写した写真に落書きをすると、それがそのまま本人の顔に表示されるという仕組みで、離れた安全な場所からいたずらを仕掛けられます。
要領の悪いのびた
ジャイアンとスネ夫が壁に落書きしていたにもかかわらず、近くを通りかかっただけで自分の責任にされてしまったのびた。ドラえもんは仕返しのためにらくがきじゅうを出します。のびたが理不尽な被害を受けて仕返しをするという展開は、ドラえもんの短編では定番のパターンですが、仕返しの手段の面白さがエピソードごとに異なるのが読み応えにつながっています。
じゅう(銃)でターゲットを決め、スコープに写した写真に落書きをすると、それがそのまま本人の顔に表示される仕組みです。スネ夫とジャイアンに仕返しの落書きをするのびたですが、これがまたなかなかセンスがいい!

バレずにここまでできると、のびた本人もきっと楽しいでしょうね。最後はすっかり満足したのびたなのでした。
見よ、のびたのセンス!
のびたがスネ夫に落書きをした時のこと。しずかちゃんと楽しそうにおしゃべりに興じるスネ夫に、まずはほっぺたに一撃食らわせます。

突然顔が汚れてしまったスネ夫は慌てて顔を拭きますが、今度はなぜか鼻毛(落書き)が生えてしまいます。

スネ夫が顔を拭けば拭くほど落書きが増えてしまい、最終的には逃げ出してしまったのでした。

落書きの内容といい、タイミングといい、完璧なのびたですね。こういういたずらにかけては、のびたの右に出る者はいないかもしれません。普段は勉強も運動もさっぱりなのびたですが、こういう場面での判断力と発想の豊かさは本物です。仕返しの場面でのびたが生き生きとしている様子が、読んでいてとても痛快です。
離れた安全な場所から落書き
銃で狙いをつけさえすれば、離れた場所からでもバレずに安全に落書きすることができます。のびたの場合はかなり近い場所からスネ夫とジャイアンにいたずらをしましたが、ここまで危険を犯さなくても大丈夫です。のびたは射撃の腕前がプロ級ですので、まず狙いを外すこともないでしょう。射撃だけは天才的な腕前を持つのびたにとって、銃という形の道具は非常に相性がいいわけです。そういう意味でも、らくがきじゅうはのびたのために用意されたような道具といえます。
離れた場所から相手に影響を与えるという設計は、安全な仕返しを可能にしています。正面からジャイアンと戦えばのびたに勝ち目はありませんが、らくがきじゅうなら距離を保ちながら確実にダメージを与えられる。のびたの弱さと道具の強さが絶妙にマッチした組み合わせです。
ちょっと気になる使い方
もしこうだったらというシーンを想定した使い方を紹介します。テレビで中継先が映し出されている時に、らくがきじゅうでテレビ画面を映し出してらくがきすると一体どうなるのでしょうか。普通に考えればテレビ画面に落書きされるだけかもしれませんが、中継先の景色がスコープに表示されているため、ひょっとして中継先の場所に落書きされるのかもと想像できます。距離的な制約がないとすれば、家にいながら世界中のあらゆる場所に落書きできてしまうかもしれませんね。
落書きの対象が人の顔だけなのか、物体にも落書きできるのかという点も気になります。もし建物や看板などにも落書きできるなら、道具の用途は大きく広がります。コミックでは人の顔への使用しか描かれていませんが、そういった想像を膨らませるのもドラえもんの道具を楽しむ醍醐味のひとつです。
らくがきじゅうを通じて表現されるのびたの画力と発想力は、普段ののびたのイメージとは少し違う側面を見せてくれます。勉強もスポーツも苦手なのびたですが、このエピソードでは落書きのセンスと機転の良さで存在感を示しています。それがジャイアンやスネ夫への報復という文脈で発揮されるからこそ、読んでいる側が痛快に感じられます。のびたの個性や才能が道具と噛み合って輝く場面は、ドラえもんの短編の中でも特に好きなパターンのひとつです。
また、らくがきじゅうという道具の名前のキャッチーさも印象に残ります。じゅうという銃の形をしているのに、その機能が落書きというギャップが面白さを生んでいます。武器のように見えてその実は無害ないたずら道具という設計は、子ども向けの安心感を保ちながら仕返しというテーマを成立させています。ドラえもんの道具名のセンスがよく出た道具のひとつです。
らくがきじゅうが登場するエピソードは、のびたが珍しく主体的に仕返しを計画し、うまく実行するという点でも注目に値します。いつもドラえもんに頼りっぱなしのイメージがあるのびたですが、このエピソードでは自分でスコープを覗き、タイミングを計り、効果的な落書きを選んでいます。道具を使いこなす主体性という点で、のびたの意外な一面が見えるエピソードです。らくがきじゅうはそののびたの主体性を引き出した道具として、この作品の中で特別な役割を持っています。落書きが蓄積されていくスネ夫の顔の変化と、のびたがそれを見て満足する様子が、ページをめくるごとに笑いを積み重ねる構成も見事です。こういう丁寧な笑いの積み重ねが、ドラえもんの短編の面白さの核心にあります。
似た道具としてのろいのカメラも写真を通じて相手に影響を与えるという発想を持った道具です。またきせかえカメラやタイムカメラなど、カメラや映像を通じて何かを操作するひみつ道具は数多く登場します。落書きという行為に近い道具としてはそっくりクレヨンも面白い存在で、描いたものがそのまま現実化するという力強さがあります。仕返しに使う道具という観点ではウソ800も、のびたが相手に仕掛ける場面で登場する道具として共通しています。
らくがきじゅうが登場するエピソードは、のびたが仕返しという目的のために珍しく主体的かつ計画的に動く回として、ドラえもんの短編の中でも独自の位置を持っています。普段の頼りなさとは一変した機転の良さが、読んでいて気持ちよく、最後の満足げなのびたの様子が微笑ましいです。らくがきじゅうはそういうのびたの意外な一面を引き出した道具として、このエピソードの記憶と一体になっています。
らくがきじゅうというひみつ道具は、のびたの特技である射撃の腕前と組み合わさることで、ドラえもんの道具の中でも特に相性の良い使われ方をしました。仕返しという目的のために道具が完璧に機能し、のびたが満足するという結末が、このエピソードの気持ちよさを生んでいます。らくがきじゅうという道具とのびたの才能が見事に噛み合ったこのエピソードは、ドラえもんの短編の中でも特に爽快感のある一本として記憶に残ります。のびたが気持ちよく仕返しを完遂する場面は、普段の悔しさと逆転の痛快さが重なって、読んでいる方まで晴れ晴れとした気分にさせてくれます。
要領の悪いのびたを読み直すポイント
要領の悪いのびたは、効果の派手さだけでなく、使われる場面によって印象が大きく変わるひみつ道具です。ドラえもんの道具は、性能を説明するだけなら一言で済むものも多いのですが、実際のエピソードではのび太たちの性格やその場の空気が重なって、単なる便利アイテム以上の面白さが生まれます。要領の悪いのびたもその一つで、困りごとを解決する力と、使い方を間違えた時の危うさが同時に見えるところに読み応えがあります。
読者目線で考えると、要領の悪いのびたを自分ならどう使うか想像しやすい点も魅力です。学校や家、友だちとの遊び、ちょっとした失敗の場面など、日常の延長に置いて考えると、便利そうに見える一方で守るべきルールも自然に見えてきます。そこまで含めて読むと、要領の悪いのびたは笑える道具でありながら、未来の技術とどう付き合うかを考えさせてくれる存在でもあります。


