ピーヒョロロープは、笛の音でロープを蛇のように操れる、音楽と作業を結びつけたひみつ道具です。曲を吹くだけで物を取る、荷造りする、相手を縛るといった動きができるため、地味に応用範囲の広い道具です。
蛇使いの芸をロープでやる道具
コミック7巻のピーヒョロロープでは、ドラえもんが笛、カゴ、楽譜を取り出します。蛇使いが笛で蛇を操るように、専用の曲を吹くことでロープに命令できます。楽譜があるため、誰でも音さえ出せれば使えるように見えますが、曲を選ぶ判断と演奏の正確さは必要です。
最初の活躍は、のび太の家の屋根に乗ったボールを取る場面です。ドラえもんがもってこいの曲を吹くと、ロープがするすると伸びてボールを取りに行きます。のびる手のように直接手を伸ばす道具とは違い、ロープを介して作業するところが楽しいです。
ダンゴの手でどうやって音階を変えているのか? ドラえもん7巻 ピーヒョロロープ P170:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄
生活道具としてかなり便利
ピーヒョロロープは、ただの芸では終わりません。ママが荷造りに苦労している時、にづくりの曲を吹くと、ロープが荷物に巻きついてきれいにまとめてくれます。日常のちょっと面倒な作業を任せられる点では、自動そうちシリーズに近い便利さがあります。
これは便利! ドラえもん7巻 ピーヒョロロープ P171:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄
面白いのは、ロープ自体が複雑な命令を理解しているというより、曲ごとに決まった動作を実行しているように見えるところです。ロボットペーパーのように作ったものが自律的に動く道具と比べると、ピーヒョロロープは楽譜という操作体系がはっきりしています。使いこなすには、道具の機能だけでなく、曲を覚える必要があるわけです。
泥棒退治にも使える
この道具の本領は、のび太の家に泥棒が押し入る場面で発揮されます。相手を縛る曲を使えば、ロープは泥棒を捕まえることもできます。作業補助の道具が、防犯道具にも変わるのです。
自分で名乗る泥棒も珍しい ドラえもん7巻 ピーヒョロロープ P173:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄
ロープで相手を拘束するという点では、なんでもロープのような道具とも相性がよさそうです。ただし、ピーヒョロロープは相手を見つける道具ではなく、目の前の状況に対して曲で命令する道具です。だから、使用者の判断がかなり大事になります。
音楽で命令する楽しさ
ピーヒョロロープの魅力は、命令が言葉ではなく音楽であるところです。ボタンやリモコンではなく、曲を吹くことでロープが動く。これはラジコン宇宙人のようなコントローラー操作とは違う、ちょっと芸能寄りの操作感です。
一方で、音を間違えたら別の動きをしてしまう危険もあります。荷造りしたいのに縛り上げる曲を吹いてしまう、ボールを取るつもりで別のものを持ってくる、そういう事故も起こりえます。反のうテストロボットのような判断補助ではなく、演奏者の腕がそのまま結果に出る道具です。
ロープという単純な素材に、音楽で命令する仕組みを組み合わせるだけで、生活道具にも防犯道具にもなる。ピーヒョロロープは派手な名前ではありませんが、ドラえもんらしい発想の柔らかさがよく出ています。
ロープの用途を拡張する道具
ロープは本来、結ぶ、引く、縛るという単純な用途の道具です。ピーヒョロロープはそこに移動や判断を加え、ロープそのものを小さな作業員のようにしています。道具が複雑な機械ではなくロープのままなのに、できることだけが一気に増えているのが面白いです。
音楽による操作も、子ども向けの遊びとしてよくできています。曲を覚えればできることが増え、演奏を間違えればうまくいかない。便利な未来道具でありながら、使う人の練習や手際が残されているところに、道具としてのほどよい手応えがあります。
また、ロープという道具は伸びたり曲がったり巻きついたりできるため、もともと動きの表現と相性がいい素材です。そこに蛇使いのイメージを重ねることで、ただの便利グッズではなく、見ていて楽しい道具になっています。作業を片づけるだけならもっと効率のいい道具もありそうですが、笛を吹くとロープが踊るという絵の強さは、ピーヒョロロープならではです。
楽譜があるから道具になる
ピーヒョロロープで大事なのは、笛とロープだけではなく楽譜がセットになっていることです。道具そのものが便利でも、どの曲で何が起きるのかわからなければ使えません。楽譜があることで、使用者は機能一覧を読みながら操作できます。これは、未来の道具でありながら、かなりアナログな説明書でもあります。
曲ごとに動作が決まっているなら、新しい曲を作れば新しい命令も増やせるかもしれません。荷造り、もってこい、相手を縛るといった既存の曲だけでなく、掃除、運搬、救助などの曲があれば用途はさらに広がります。ロープは細い場所にも入れて、高い場所にも届き、相手を傷つけずに拘束できます。使い方を増やせば、かなり優秀な生活補助具になります。
一方で、音で動くという性質には弱点もあります。周囲がうるさい場所では正しく反応しないかもしれませんし、別の笛や似た旋律に反応する危険もあります。演奏が下手な人が使えば、途中まで別の動作をしてしまう可能性もあります。便利に見える道具ほど、操作体系のミスがそのまま事故になります。
この道具が泥棒退治に使えるのも、ロープの性質と音楽の命令がうまくかみ合っているからです。攻撃するのではなく縛る。大きな音や派手な光で相手を倒すのではなく、するすると巻きついて動きを止める。ピーヒョロロープには、ひみつ道具の中でも穏やかな制圧道具としての魅力があります。
最初は屋根のボールを取るだけの道具に見えますが、読み返すとかなり応用が利きます。日用品のロープ、蛇使いの芸、楽譜による命令。この三つを組み合わせただけで、ここまで使い道が広がるのが藤子F不二雄作品の発想のうまさです。
ドラえもん自身の演奏能力
ピーヒョロロープを自然に使っているドラえもんを見ると、ドラえもんは意外と芸達者です。楽譜を選んで、笛を吹き、ロープに目的の動きをさせています。手が丸いドラえもんがどうやって細かく音階を出しているのかという疑問もありますが、作中では当たり前のように演奏しています。
この当たり前さが、ドラえもんの頼もしさでもあります。のび太に道具を渡すだけでなく、使い方を実演し、状況に応じて曲を選びます。ボールを取る、荷物をまとめる、泥棒を捕まえるという流れの中で、ドラえもんはロープの可能性を段階的に見せているわけです。
もしのび太が一人で使った場合、ここまでうまくいったかは怪しいところです。曲を覚える前に適当に吹いて、ロープが変な動きをする展開も十分ありえます。ピーヒョロロープは、道具そのものの性能に加えて、使用者の音感や冷静さが必要です。演奏型の道具だからこそ、のび太の苦手分野が出やすいかもしれません。
それでも、笛の音でロープが動く絵には独特の楽しさがあります。目に見えない音が、目に見える動きへ変わる。ひみつ道具としての機能だけでなく、漫画の画面としてもわかりやすい道具です。ピーヒョロロープは、地味な素材を音楽で一気に楽しい存在へ変えてしまう道具なんですよね。




