無人たんさロケット

無人たんさロケットは、人が入れない場所へ自動で入り込み、内部を撮影して情報を送ってくれる探査用のひみつ道具です。小さなロケット型の見た目ながら、障害物を避けるレーダーと写真送信機能を備えており、現代のドローンよりもかなり先を行く性能を持っています。

登場するのは、コミック14巻の宇宙人の家?です。のび太、ジャイアン、スネ夫が、ある不気味な家をめぐって宇宙人の秘密基地かどうかで言い争います。ジャイアンとスネ夫は宇宙人がいると信じ、のび太はそんなはずはないと否定する。いつもの小さな口げんかが、ゲンコツをかけた勝負へ発展する流れがいかにもドラえもんらしいです。

怖い家を調べるための小さな探査機

のび太は自分の主張を証明するため、ドラえもんから無人たんさロケットを借ります。人間が入るには危ない場所、狭い場所、正体の分からない場所を、まず道具に調べさせるという発想です。直接のぞきに行けば、見つかったり、閉じ込められたり、相手に襲われたりする危険があります。そこで小型の探査機を送り込むのは、かなり理にかなっています。

この道具は、ただ飛ぶだけではありません。搭載されたレーダーで障害物を避け、目的地の内部を進み、写真を撮って送ってくれます。操縦者が細かく操作しなくても進めるため、使い方としてはラジコン宇宙人より自律性が高い印象です。人形を動かして現場へ入るのではなく、機械が自分で調べて帰ってくるのが強みですね。

現代の感覚で見ると、無人たんさロケットはドローン、内視鏡カメラ、災害用探査ロボットを合わせたような存在です。狭い通路を進み、暗い室内を撮影し、離れた場所へ情報を送る。ドラえもんの道具としては派手な攻撃力こそありませんが、情報を得るための道具としてはかなり実用的です。

宇宙人のぬいぐるみにがっかりするジャイアンとスネ夫
かなり大きなぬいぐるみとUFOにも見える

ドラえもん14巻「宇宙人の家?」P145:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄

宇宙人騒動の正体

探査の途中で、ドラえもんとのび太は宇宙人らしき写真を見て驚きます。のび太は宇宙人などいないと強く言っていた側なので、ここで一気に立場が弱くなる。怖い家の中に本当に何かがいるのかもしれない、という瞬間の盛り上げ方がうまい場面です。

しかし、あとから分かる正体は、映画用の人形や大道具を保管している場所でした。宇宙人に見えたものは本物ではなく、作り物だったわけです。ここで面白いのは、のび太もジャイアンたちも完全には正しくないことです。宇宙人の秘密基地ではないが、普通の家とも言い切れない。だから全員が微妙に外しているのです。

このオチは、無人たんさロケットの性能を疑う話ではありません。道具はちゃんと中の写真を送っている。問題は、写真を見た側がどう解釈するかです。情報が正確でも、受け取り方を間違えれば結論はずれる。これはタイムカメラのような観察系道具にも通じる面白さです。

お互いを見かけて逃げ出すのび太、ジャイアン、スネ夫
しばらくこの状態が続きそうだ

ドラえもん14巻「宇宙人の家?」P146:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄

写真だけでは真実に届かない

無人たんさロケットは現場の写真を送れますが、その写真だけで全てが分かるわけではありません。宇宙人に見えるものが写れば、人は宇宙人がいると思い込みます。けれども、それが着ぐるみなのか、人形なのか、映画の小道具なのかは、追加の文脈がないと判断できません。

この点が、この道具の弱点でもあり、話の笑いにもなっています。探査機がどれほど優秀でも、見た人間の早とちりまでは修正してくれない。のび太とドラえもんは写真に驚いて逃げ、ジャイアンとスネ夫も別の方向から真相を知ってがっかりする。結局、全員が自分の思い込みに振り回されています。

似た構造は人さがし機にもあります。場所や手がかりを見つける道具は便利ですが、最後にそれをどう読むかは人間側の仕事です。無人たんさロケットは事実を集める道具であり、推理まで完了してくれる道具ではない。そこが、万能すぎないちょうどよさになっています。

ドローンより便利な未来の探査道具

無人たんさロケットは、一見するとドローンに近い道具です。ただし、現代のドローンは操縦技術や通信環境、バッテリー、法律上の制限にかなり左右されます。無人たんさロケットは、指示した場所へ自動で向かい、障害物を避け、写真を送ってくるため、操縦の負担が小さい。子どもが使っても探査できるところに未来道具らしさがあります。

災害現場で考えると、かなり頼もしい道具です。倒壊した建物のすき間、火山の火口、地下施設、放射線が強い場所、宇宙船の外部点検など、人間が近づきにくい場所へ先に入れる。無重力ネットのような環境対応系の道具と組み合わせれば、危険な場所での調査能力はさらに広がりそうです。

ただし、勝手に他人の家を調べる使い方は問題があります。作中では子どもの勝負として描かれますが、現実ならプライバシー侵害そのものです。内部を撮影して送る力がある以上、探査用であると同時に監視用にもなりうる。便利な道具ほど、使う目的と許可が大事になります。

無人たんさ機のレーダー
ドローンよりも優れている

ドラえもん14巻「宇宙人の家?」P144:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄

子どもの好奇心と探査の危うさ

この話では、無人たんさロケットの高性能さよりも、子どもたちの好奇心が前に出ています。怖い家、宇宙人の噂、ゲンコツをかけた勝負。材料だけ見ればくだらないのに、当人たちにとっては大事件です。だからこそ、探査ロケットという本格的な道具が妙に似合います。

ドラえもんの道具は、子どもの小さな関心を大きな冒険に変えることがあります。無人たんさロケットもその一つです。家の中を調べるだけなら地味な行為ですが、宇宙人の秘密基地かもしれないと思った瞬間、探査は宇宙規模の謎解きに変わる。事実は映画の小道具でも、そこへ至るまでのワクワクは本物です。

無人たんさロケットは、情報を集める力と、情報に振り回される人間の弱さを同時に見せる道具です。危険な場所を調べる未来技術として優秀でありながら、のび太たちの勘違いを止めることはできない。写真一枚で大騒ぎする子どもたちの姿まで含めて、かなり味のある探査道具です。

さらに考えると、無人たんさロケットはドラえもんの道具の中でも、冒険の前段階を支えるタイプです。目的地へ行く道具、戦う道具、逃げる道具は目立ちますが、先に調べる道具があるから危険を避けられます。のび太たちは怖がって途中で逃げますが、道具としてはまさに偵察の役割を果たしています。

もし大長編の冒険に持ち込めば、かなり役に立つはずです。未知の洞窟、敵の基地、宇宙船の内部、海底施設など、ドラえもんたちが直接入る前に状況を確認できます。つかみどりバズーカのような回収系の道具と組み合わせれば、危険物を見つけて離れた場所から処理することもできそうです。

ただし、探査には緊張感もあります。写真が送られてきた瞬間、その情報を見た人は現場にいないまま恐怖だけを受け取る。作中でドラえもんとのび太が宇宙人の写真に驚いたのも、まさにそれです。安全な場所にいるはずなのに、想像力が先に走ってしまう。無人たんさロケットは現場の危険から人を遠ざける一方で、見えたものへの恐怖はしっかり届けてしまいます。

この道具の価値は、怖いもの見たさを安全な形に変えるところにあります。子どもたちは噂の家へ行きたいが、中へ入るのは怖い。そこで探査機を送る。現実の科学調査も、火星探査機や深海探査機のように、人が行けない場所へ機械を送るところから始まります。無人たんさロケットは、その発想を子どもの日常の中へ落とし込んだ道具なのです。

最後の逃げ出すオチも、この道具らしさをよく出しています。正体が分かっても、ゲンコツをかけた勝負の気まずさは残る。探査で真相は見えても、人間関係の後始末まではしてくれません。高性能なロケットがあっても、のび太たちの意地の張り合いは解決しない。その小ささが、宇宙人騒動の笑いをさらに引き立てています。

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