海水などをストローで吸い上げると、中で真水に変えて飲めるようにしてくれるま水ストロー。サバイバル状況下での水分確保に欠かせない道具で、のびたの無謀な大冒険を支えたひみつ道具の一つです。
水は何よりも大切
サバイバル状況下において、水分の確保というのは何においても最重要課題となります。人間は食べ物がなくても数週間生きられますが、水なしでは3日と持ちません。ドラえもんのコミック内でも水分を得ることのできる道具がいくつか紹介されています。
夏休みを利用してドラミちゃんに協力してもらい、のびたは太平洋を歩いて横断するという壮大な計画を打ち出します。もちろん生身の体ではそんなことは到底不可能なので、たくさんのひみつ道具を使いながら、という条件付きではありますが、ま水ストローもその道具の1つだったのです。このストローで海水を吸えば真水になる、とても便利なひみつ道具です。
実際にコミックの中で使われているシーンはありませんが、海底を歩いて横断するという、無謀かつチャレンジャーな計画において、真水の確保が重要だということを知っていたのびたは、何気にサバイバル知識に長けています。水だったら海水があるじゃないかと思う人もいるかもしれませんが、海水を飲んでしまうと含まれた塩分で水分をさらに奪われてしまいます。実際、海で遭難した時に、誘惑に負けて海水を飲んでしまい、命を落としたという人は大勢います。のびたの命をつなぐためにも、必要不可欠な道具であったことはいうまでもありませんね。
再登場するも使用シーンは無し
ま水ストローはコミック9巻「無人島の作り方」では実は再登場します。海底ハイキングに登場したエラチューブ・深海クリームと一緒に紹介されているのですが、残念ながら直接使っている描写はこの時もありません。ジュースを飲む要領でストローから海水を吸うことで、中で真水に変わった状態で口の中に入ってくる仕組みですね。使い方はなんとなく想像できますが、コミックでも使っている様子を一度見てみたかったものです。
ドラえもんのひみつ道具の中には、存在が紹介されるだけで実際に使用シーンが描かれないものがあります。ま水ストローはその代表例で、2度登場してなお一度も実際に使われないというのは珍しいケースです。見せ方として、こういった未使用の道具が手持ちにあることで、冒険の準備の万全さを表現しているとも読めます。のびたが思わぬ知識でサバイバルを準備するという描写は、いつものヘタレキャラとのギャップとして効いています。
現代で実現しているま水ストロー
このま水ストロー、なんと現代の世界ですでに実用化されていることはご存知でしょうか。東洋技研株式会社よりストロー濾水器 mizu-Qとして普通に販売されているんですよ(カテゴリーはアウトドアや災害避難時用品とされています)。
さすがに海水を真水に変える程の強力な濾過作用はありませんが、生水や雨水を飲み水に変える事は出来るようです。これはドラえもんのひみつ道具に現代の科学がようやく追いついたといっていいでしょう。
また、海水を真水に変えるほどの濾過作用を持つ濾水器としては、大きなスーパーなどによく装置が置かれているRO水があります。きれいな水で美味しいお茶やご飯が食べられるというキャッチコピーで、あまりに身近すぎて気付かれにくいかもしれませんが、使われているフィルターの威力は相当なものです。海水を飲料水に変える技術は、中東などの水が少ない地域では海水淡水化プラントとして大規模に運用されています。飲み水をその場で作り出すという意味では、ま水ストローの発想は現代技術の延長線上にあります。
ま水ストローの仕組みを考える
ストロー一本で海水を真水に変えるという仕組みは、現実の技術から考えると相当な小型化が必要です。海水淡水化技術の中で最も普及しているのは逆浸透膜(RO膜)方式で、海水に高圧をかけて特殊な膜を通過させることで塩分を除去します。この技術をストローサイズに収めるためには、膜の性能と圧力発生の仕組みを根本的に変える必要があります。
未来の技術ではナノスケールの素材でこれを実現するかもしれませんが、現時点ではまだ研究段階です。ま水ストローが実現するためには、材料科学・流体力学・エネルギー技術の複数分野での革新が必要で、それだけに完成したときのインパクトは計り知れません。アフリカや中東など水不足に悩む地域では、携帯型の海水淡水化ストローは命を救う道具になりえます。
ま水ストローに似たひみつ道具
ま水ストローに似たような役割をする道具としてはどこでも蛇口があります。その名の通り、壁だろうが木であろうが装着して蛇口をひねるだけで水が出てくるひみつ道具です。
夢の道具 ドラえもん26巻「森は生きている」P113:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄
どんな場所でも確実に水が出る点では、使い勝手に関してはま水ストローよりも優れていると感じます。ただし海中ではどこでも蛇口は使えませんよね。なんといっても周りは海水に囲まれているので、水を出したところで混ざってしまい、使い物にならないからです。また、他にも雨降り傘が、真水を確保するという形で使われていたりします。
意外とサバイバル力のあるのびた ドラえもん14巻「無人島へ家出」P85:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄
サバイバル感覚に優れたのびた
上でも書きましたが、のびたは何気にサバイバルな状況に柔軟な対応ができる人間なのではないでしょうか(何気に無人島にたった一人で10年も過ごせる辺りで十分凄いといえます)。普段はヘタレキャラの代名詞なのびたですが、いざという時に力を発揮するタイプなのかもしれませんね。
ま水ストローを携帯品に加えていたことは、のびたが単に道具に頼るだけでなく、冒険に必要なものを自分なりに考えて準備している証拠でもあります。ドラえもんに全部お任せではなく、自分でも必要なものを考えて準備する姿勢は、普段ののびたのイメージとは違う一面を見せてくれます。
ま水ストローとのびたの意外な知識
のびたが太平洋横断計画を立てるにあたり、ま水ストローを必要な道具として認識していたのは、彼のサバイバル知識の片鱗を見せるシーンです。普段は勉強嫌いで何も考えずに行動するように見えるのびたですが、実は自分が本気で取り組むことに対しては、必要な知識をしっかりと持っていることがあります。
海水を飲んではいけないという知識は、小学生でも知っていることかもしれませんが、それをひみつ道具の選択に反映させるという行動は、のびたが計画に真剣に向き合っている証拠です。ドラえもんがすべてお膳立てするのではなく、のびた自身が必要なものを考えて準備するという場面は、このエピソードでのびたの意外な一面を引き出しています。普段のヘタレなのびたとのギャップが、このエピソードを特別なものにしている大きな理由の一つです。ひみつ道具があってもなくても生き抜こうとするのびたの底力が、ま水ストローというさりげない道具選択からも伝わってきます。実際に使われるシーンがなかっただけに、いつかのびたがこの道具を使い切る日を想像させてくれる道具でもあります。
水分・食料を確保するひみつ道具は他にも登場します。コンクフードは1缶に30食分の食料が半練り状態で入っている道具で、ま水ストローとともに太平洋横断計画に携帯された心強い相棒です。エラチューブは水中でも呼吸できるようにする道具で、海底での生存を支える意味でま水ストローと同じ文脈で使われます。生存に関わる道具という観点では寝ぶくろのように環境適応を助ける道具も重要な存在です。





