ひらりマント

ひらりマントは、向かってくる人やエネルギーをひらりと受け流す、ドラえもんを代表する防御系のひみつ道具です。赤い布を振るだけで危険をそらせるわかりやすさと、大長編でも通用する応用力が魅力です。

赤い布で攻撃を受け流す定番道具

ひらりマントは、一辺がおよそ1メートルほどの正方形をした赤い布状の道具です。闘牛士がマントで牛をかわすように、向かってくる物体やエネルギーを別の方向へ受け流します。

説明としては電磁波の反作用を利用する道具とされており、単なる布ではありません。手に持って振ることで、相手の進行方向そのものを変えるように働きます。ドラえもんの防御道具の中でも、見た目と効果が直感的に結びついている代表格です。

攻撃を止める道具ならバリヤー安全カバーのような発想もありますが、ひらりマントは受け止めずにそらします。正面からぶつからないため、使用者に反動が来にくそうなところが実用的です。

ジャイアンをひらりとかわす初登場回

コミック5巻のひらりマントでは、のび太をしつこく追いかけ回すジャイアンに対抗するため、ドラえもんがこの道具を出します。のび太が外へ出た途端に襲いかかってくるジャイアンへマントをひと振りすると、ジャイアンは方向を変えられて壁へ激突します。

ひらりマントでかわす
のび太のポーズがかっこいい

ドラえもん5巻「ひらりマント」P114:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄

さらに向かってくるジャイアンへもう一度使うと、偶然通りかかった先生にぶつかり、ジャイアンはお説教を受けることになります。のび太が自分の力で殴り返すのではなく、相手の勢いをそのまま別方向へ逃がすのが、この道具らしいところです。

この回では犬を側溝へ落としたり、急に降ってきた雨をしのいだりもしています。人間だけでなく動物や雨粒までそらせるため、効果範囲はかなり広いです。攻撃道具というより、身に降りかかる厄介ごとをまとめて受け流す道具として描かれています。

防御なのに相手へ被害が出る怖さ

ひらりマントは守るための道具ですが、使い方によっては相手に大きな被害が出ます。ジャイアンは壁へぶつかり、犬は側溝へ落ちています。攻撃を消すのではなく方向を変えるため、そらされた先に別の危険があると事故につながります。

この点では、痛みはね返りミラーお返しハンドのような反撃寄りの道具にも近い怖さがあります。自分は守られる一方で、相手や周囲に結果が返っていく。ひらりマントは見た目が軽やかな分、その危うさが見落とされがちです。

車や電車、飛行機のような乗り物に向けて使えば、大事故につながる可能性があります。作中でもいたずら半分で使うには危険な道具として扱われています。防御道具であっても、周囲を見ずに振れば立派な妨害道具になってしまいます。

似た防御系としてはヒラリくつ下もありますが、こちらは身につけた本人の動きに作用する印象が強いです。ひらりマントは外から来るものをそらすため、使用者の腕前と判断がそのまま結果に出ます。

手を離すと近づけないという弱点

ひらりマントは、使用者が手に持っている間は頼もしい道具です。ところが、手を離して風などでマントがひらひら動くと、自分自身にも反射効果が出てしまいます。近づこうとしても、マントの効果で押し返されてしまうわけです。

ひらりマントが自然に動く
いくらなんでもマントの存在に気付きそうなものだ

ドラえもん5巻「ひらりマント」P117:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄

この弱点はかなり面白いです。普通の防御道具なら、落としたら効果がなくなりそうなものですが、ひらりマントは動いている限り効果を発揮します。つまり、道具が使用者の管理を離れても働き続ける危険があります。

強力な道具ほど、回収できるかどうかが重要になります。くすぐりノミのように小さなものが散らばる道具も厄介ですが、ひらりマントも落としただけで近づけない障害物になります。便利さと管理の難しさがセットになっているんですよね。

この回ののび太は、マントを手に入れた直後こそ得意げに使っていますが、道具に振り回される側へすぐ回ってしまいます。ドラえもんの短編ではよくある流れですが、ひらりマントはその落差が特にわかりやすいです。強い道具を持てば勝てるのではなく、道具の性質を理解して扱わないと自分も困る。そこがきちんとギャグになっています。

大長編での信頼感

ひらりマントは、短編だけでなく大長編でも繰り返し登場します。ドラえもんたちが強敵と向き合う場面で、攻撃をかわす道具として使いやすいからです。腕に装着する空気砲が反撃の定番なら、ひらりマントは防御の定番です。

大長編のび太の日本誕生では、エネルギー波のような実体のない攻撃にも対応しています。単に物体を横へそらすだけではなく、見えない力の流れまで受け流せるところに、後年のひらりマントの頼もしさがあります。

ひらりマントとエネルギー波
大長編でも大活躍のひらりマント

大長編のび太の日本誕生P110:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄

このあたりは、初登場時よりも性能が広く描かれているように見えます。雨をしのいだらマントが濡れてしまう初期の描写と比べると、エネルギー波までかわす後年のひらりマントはかなり頼もしいです。道具そのものが改良されたのか、描写が冒険向けに広がったのか、どちらにしてもファンには楽しい変化です。

大長編で使われるひらりマントは、危機を一瞬で終わらせる道具ではありません。攻撃をそらして時間を作り、その間に仲間が動く。だから戦闘の緊張感を壊さずに、ドラえもんたちが生き延びる余地を作れます。強すぎる道具なのに物語を止めない、このバランスがうまいです。

また、ひらりマントは持ち主の判断力が問われます。どの方向へそらすか、相手との距離をどう取るか、後ろに誰かいないか。振れば自動的に安全になるわけではありません。のび太がポーズを決めて使える道具でありながら、実はかなり周囲を見る必要があります。

大長編では、仲間が近くにいる場面で使われることも多いため、この判断はさらに重要になります。敵の攻撃をかわした先に仲間がいれば意味がありません。ひらりマントは単なる盾ではなく、攻撃の進路を操る道具です。使いこなすには、瞬間的に場面全体を読む力が必要になります。

攻撃しない強さがドラえもんらしい

ひらりマントの魅力は、相手を直接攻撃しないところです。向かってくる力を利用し、別の方向へ流す。弱いのび太でも、強いジャイアンに正面から勝つ必要がありません。道具のアイデアで力関係を変える、ドラえもんらしい解決法です。

同じ攻撃・防御系でも、ガッチリグローブスーパー手ぶくろは力を強める方向の道具です。ひらりマントは力を強くするのではなく、相手の力をずらします。この違いが、道具としての個性を際立たせています。

しかも、使う姿が絵になります。赤いマントを構え、相手をひらりとかわす動きは、子どもがまねしたくなるわかりやすさがあります。ドラえもんの道具は機能だけでなく、見た目の記憶に残ることも大事ですが、ひらりマントはその条件をしっかり満たしています。

防御道具として見た時、ひらりマントは相手を傷つけない選択肢にもなります。パンチ銃水圧銃のように相手へ衝撃を与える道具ではなく、まず攻撃をかわす。相手を倒す前に自分を守るという発想が、ドラえもんらしいやさしさにもつながっています。

ただし、そらした先で相手が壁や地面にぶつかれば、結果的に痛い目を見ることもあります。ひらりマントは平和な道具に見えて、状況次第ではかなり危ない。防御といたずらの境目が薄いところも、短編のギャグとしてよく効いています。

防御に特化した道具でここまで記憶に残るのは、ひらりマントの見せ方がうまいからです。赤い布、ひと振り、ひらりという動き。その三つだけで何が起きたか伝わります。空気砲の声と同じように、ひらりマントにも読者がまねしやすい動作があります。

持っていれば頼もしい一方、落とせば自分も近づけない。防御道具でありながら事故の可能性もある。ひらりマントは、軽やかな名前の裏に未来道具らしい強さと危うさを抱えた、長く愛される定番道具です。

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