クローニングエッグは、動物の遺伝子アンプルを注入することで、絶滅した生き物や空想上の生き物を卵から誕生させられる専用ケースです。アンプルを混ぜ合わせることで世界に存在しない新種の生き物まで生み出せる、とんでもない可能性を秘めた道具です。
古代の世界の空想動物
7万年前の日本でもペットが欲しい!
そう考えたドラえもんたちはパラダイス創作の1つとして、動物の遺伝子アンプルとクローニングエッグで動物をつくることにします。
担当になったのび太は持ち前の機転を活かし、アンプル同士を混ぜ合わせて空想の動物を生み出すことに成功します。どんな遺伝子を組み合わせるかはのび太のセンス次第なので、同じ道具でも使う人によって生み出される生き物がまったく変わってくるのが面白いところです。
時間経過で動物が誕生 大長編のび太の日本誕生P47:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄
動物たちはペットとなり、移動手段となり、頼もしい仲間となり、旅を盛り上げてくれるのでした。7万年前の原始時代という見知らぬ環境の中で、自分たちで生き物を作り出してチームを組むという発想は、のび太らしいたくましさを感じさせます。
ペットを孵します
クローニングエッグは動物を孵すための専用ケースです。
中にアンプルを注入して待つだけの簡単なお仕事なので、のび太でも簡単にこなすことができますね。注入後はしばらく時間をおくと卵が現れ、やがてそこから動物が孵化します。どれくらいの時間がかかるかはアンプルの種類によって異なるようですが、グルメンを食べさせるとぐんぐん成長するので、孵化後の世話も楽ちんです。
誕生した動物たちはグルメンを食べさせるとぐんぐん成長します。コミックでは馬や恐竜のような大型の生き物まで誕生させており、クローニングエッグのサイズからは想像できないほどのスケールの生き物を生み出せることがわかります。
コピーや複製に関わる道具としてはフエルミラーのように鏡に映したものを増やすものや、コピーロボットのように自分のコピーを作るものがありますが、クローニングエッグは生命そのものをゼロから作り出せる点が他と全く異なります。既存の何かを複製するのではなく、遺伝子の組み合わせという設計図から新たな命を生み出せるのです。
また、立体コピー紙は既存のものを複製する道具ですが、クローニングエッグは遺伝子を組み合わせることで世界に存在しない新種の生き物すら生み出せます。これは単なるコピーや複製を超えた、創造に近い行為と言えるでしょう。
登場はこの時だけ
クローニングエッグや動物の遺伝子アンプルが登場するのは大長編ドラえもん「のび太の日本誕生」編のみとなっていて、ここでしか見ることができません。
用途が限られてしまうことの他に、動物の命を軽々しく扱う印象もあることから倫理的にNGが出ているのかも、と推測しています。現代の感覚では、クローン技術は生命倫理の観点から非常に慎重に扱われるべき分野です。22世紀の未来では技術的には実現されていても、利用には厳格なルールがあるのかもしれません。
動物をつくったはいいものの・・・ 大長編のび太の日本誕生P77:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄
のび太がつくった空想上の動物は、過去も未来も現代も大っぴらに飼うことはできず、結局未来の空想サファリパークで預かってもらうことになります。
命をつくるだけつくって最後は他人任せという行動が、現代では受け入れがたいとされる可能性は考えられますね。生き物を作り出す責任について、あらためて考えさせられる結末です。
クローニングエッグとタマゴコピーミラーの違い
生き物を誕生させるひみつ道具という意味では、タマゴコピーミラーも生き物のコピーをタマゴから孵す仕組みですが、2つの道具には大きな違いがあります。
タマゴコピーミラーは既存の生き物を鏡に写してコピーを作る道具で、基本的には元の生き物と同じ個体が誕生します。一方クローニングエッグは遺伝子アンプルを注入することで、異なる種の遺伝子を組み合わせた全く新しい生き物を生み出せます。元となる生き物がいなくてもよく、遺伝子さえあれば過去に絶滅した生き物を復元することさえ理論上は可能です。
この違いは非常に大きく、クローニングエッグはひみつ道具の中でも特に生命科学的な道具と言えるでしょう。のび太が担当という点も、一見頼りないように見えて、型にはまらない発想で新しい種を生み出せるという意味では適役だったかもしれません。
のび太のアイデアが光る道具
クローニングエッグを使ったのび太は、アンプル同士を混ぜ合わせるというアイデアを自分で思いつきました。この発想は、道具の説明書には書かれていないであろう独自の使い方で、のび太の柔軟な発想力が発揮された場面です。
ドラえもんの道具は使う人の発想によって活用の幅が大きく変わります。クローニングエッグもその典型で、ただ決まった動物を作るだけでなく、組み合わせ次第で無限の可能性を持つ道具になります。
また、クローニングエッグと合わせて使われる動物の遺伝子アンプルは、どんな動物のDNAが入っているかによって生まれる生き物が変わる仕組みになっています。アンプルを混ぜ合わせるのび太のアイデアは、ある意味で生物学の先取りとも言えそうです。
生み出した命と向き合う責任
クローニングエッグで最も考えさせられるのは、生み出した命への責任の問題です。のび太たちは空想上の動物を作ることに成功しましたが、その動物たちをどこで、誰が世話するのかという問題が最終的についてまわります。
結果として未来の空想サファリパークに預けることになりましたが、この解決策はあくまで特殊な状況で成立したものです。現実的に考えると、作り出した生き物の一生に責任を持つということは非常に重い義務を伴います。生き物を作ることと、生き物を育てることは別の話です。
ドラえもんの道具の中でも、生命倫理という現実の問題に最も深く関わる道具がクローニングエッグと言えます。楽しいエピソードの中にも、作者の問いかけが込められているように感じます。
7万年前の日本という舞台設定だからこそ活きた道具で、現代のドラえもんの日常話では使いどころが難しいことが、この道具が一度しか登場しない理由の一つかもしれません。動物好きなら大長編「のび太の日本誕生」でクローニングエッグの活躍をぜひ確認してみてください。
過去の生き物を甦らせるロマン
クローニングエッグで最も夢のある使い方は、絶滅した生き物の遺伝子アンプルを使うことでしょう。マンモスやティラノサウルス、ドードーなど、かつて地球に存在したが今はいない生き物を甦らせることができるとしたら、それは科学と夢の融合と言えます。
現実の科学でも、絶滅した生き物のDNAを発見し復元しようとする研究は進んでいます。マンモスのDNAがシベリアの永久凍土から発見されており、将来的には復元の可能性があると言われています。クローニングエッグはそれをはるかに手軽に実現できる道具です。
のび太たちが7万年前の日本という過去に行って動物を作るという設定は、タイムマシンとクローニングエッグの組み合わせがいかに強力かを示しています。過去に行って生きた動物の遺伝子を採取し、クローニングエッグで好きな組み合わせの生き物を作る。この可能性を考えるだけで、探検への想像が膨らみます。タイムマシンで採取した遺伝子情報があれば、現代では見ることのできない生き物を目の前に呼び出せるわけです。過去と未来をつなぐ道具の組み合わせとして、この2つはひみつ道具の中でも特に相性がいいと言えるでしょう。




