なりきりプレート

名前を書いて首からさげておくと、その人物になりきることができるなりきりプレート。周りから本当にその人物のように見られるようになる道具で、どんな役にでも変身できる夢のような道具です。

のびたは王子様!

空き地で劇の王子様になりきって練習をしていたのびたは、本物の王子様になりたいと思い、ドラえもんからなりきりプレートを借ります。首からさげた瞬間に周りの人々がのびたを王子様として接してくれるようになるという、シンプルながら強力な効果の道具です。

なりきりプレート
なんにでもなれる

ドラえもんカラー1巻「なりきりプレート」P43:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄

周りから王子様とあがめられて気分が良くなったのびたはスーパーマンや透明人間になって遊び回ります。そしてジャイアンは女の子になりきってしまい、主役のシンデレラ役を申し出る結末を迎えたのでした。ジャイアンがシンデレラを名乗り出るオチは、コミックを読んだ人なら思わず笑ってしまう場面です。どんな役にでもなれるという道具の特性を活かして、登場人物それぞれが思い思いの役を楽しんでいる様子が微笑ましいエピソードです。

なりきりプレート
もともとその素質はあったのだろう

ドラえもんカラー1巻「なりきりプレート」P47:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄

役になりきります

なりきりプレートになりたい役を書き、首からぶらさげておくと周りから本当にその人物のように見られるようになります。外見が変わるわけではなく、周囲の認識が変わるという点がユニークです。のびたがどれだけ王子様らしくない見た目であっても、プレートをつけているかぎりは周囲の人が王子様として接してくれる。これは見た目の変装道具とは根本的に異なるアプローチです。

周りの認識を変えるという効果は、使い方によっては非常に強力です。王子様として接してもらうだけなら楽しい遊びで終わりますが、権威ある人物やその道の専門家としてなりきれば、様々な場面で影響力を持てることになります。もちろんのびたがそこまで考えて使うことはありませんが、この道具が持つポテンシャルは相当なものです。

誤字に注意

のびたのように国語が得意じゃない人は誤字・脱字に気をつけましょう。のびたも王子様になりたかったのに、おじさまと書いてしまって普通のおじさん扱いされたことがありました。書き間違えるだけで効果がまったく違うものになってしまうため、文字の正確さが重要な道具です。

のびたのこういった失敗は読んでいて笑えるのですが、道具の使い方として改めて考えると、書く内容の精度が効果を左右するという設計は非常に面白いです。プレートに書く言葉次第で無限の可能性を持つ道具が、のびたの誤字によってことごとく笑いに変わるというパターンは、のびたというキャラクターの愛しさを存分に引き出しています。

設定があいまいな点が残念

なりきりプレートで役を演じている間、その人物の特殊能力まで引き継ぐのかどうか設定があいまいになっています。のびたはスーパーマンになりきったのですが、空を飛ぶことはできませんでした。ところが透明人間になった時、のびたはジャイアンやスネ夫から姿を見られることなく近づくことができたのです。

ここから推測するにすぎませんが、能力を名前で明示しておけばその力を発揮できるのではないでしょうか。透明人間は透明という特殊能力を持った人のことで、名前にも透明であることをわざわざ示しています。一方でスーパーマンは、力が強く、空を飛び、強靱な肉体構造を持つ人のことですが、名前で能力を示しているわけではありません。つまりなりきりプレートに能力を細かく条件設定することでその力を発揮できるのではないでしょうか。コミックではここまで細かく検証していませんが、こういう使い方もできるかもしれません。

この設定のあいまいさはコミックの謎として長くファンの間で語り継がれています。能力が出る場合と出ない場合の違いを考察するのも、ドラえもんをじっくり読み込む楽しみのひとつです。道具の仕様を詰めれば詰めるほど面白い可能性が出てくる、そういう奥行きのある道具です。

なりきり・変装・変身系の道具と比べると

なりきり・変装・変身系のひみつ道具は豊富にそろっています。へんそうセットは体の一部を付け足して他人に変装するもので、外見の変化という点でなりきりプレートと共通します。ただし外見が変わるのと周囲の認識が変わるのとでは根本的に異なっており、なりきりプレートは見た目をそのままに周囲の世界を変えるという点で独自の設計を持っています。変身セットはヘルメットとマントで超人のような力が身につく道具で、プレートに書く代わりに装備するだけという手軽さがあります。わんにゃんごっこつけ耳は動物になりきる道具で、子どもの遊び感覚という点でなりきりプレートと似た文脈で使われます。完全に別人になりたい場合はコピーロボットでそっくりな分身を作る方法もあります。なりきりプレートが持つ手軽さと自由度の高さは、他の変装道具にはない魅力です。書く内容を変えるだけで無限の役になれるというシンプルな設計が、使い手の発想次第でどこまでも広がる可能性を秘めています。コミックに登場したエピソードでは遊び道具として使われていましたが、実際にはもっと深刻な場面でも有効なはずです。たとえば医師や専門家としてなりきって緊急の場面を乗り切ったり、偉い人物としてなりきって困難な状況を打開したりという使い方も理論上は可能です。のびたがそこまで考えないのがのびたらしいところでもあり、読んでいて微笑ましくなります。名前を書いてぶら下げるだけという操作の手軽さと、その裏に秘めた可能性の大きさのギャップが、なりきりプレートを特別な道具にしています。ジャイアンがシンデレラになりきってしまったオチを含めて、このエピソードはなりきりプレートという道具の本質をよく表しています。誰でも何にでもなれるという自由が、時に予想外の方向に転がっていく。それがドラえもんの道具が持つ面白さで、なりきりプレートはその典型です。また、プレートに書いた言葉で周囲の認識が変わるという設定は、言葉が持つ力や社会における肩書きの意味についても考えさせてくれます。役割が人を変えるのか、人が役割を変えるのか。コミックを読みながらそんなことを考えるのも、ドラえもんという作品の深さを楽しむ一つの方法です。なりきりプレートは子ども向けの遊び道具という印象が強いですが、その背後にある設定の面白さはドラえもんファンが何度も語り合いたくなる話題を提供してくれます。シンプルな道具ほど使い方の幅が広く、想像する余地が生まれる。ドラえもんのひみつ道具の中でも、なりきりプレートはそういう奥深さを持つ道具のひとつです。王子様になってはしゃぐのびたの姿と、最終的にジャイアンがシンデレラとして収まるオチの完成度は、短編コミックの面白さの見本といえます。道具の設定の面白さとキャラクターの個性が絡み合ってはじめて生まれる笑い。なりきりプレートはそれを存分に引き出した道具です。シンプルな道具が最高のオチを生み出すという点で、このエピソードはドラえもんの短編の中でも完成度の高い一本です。読み返すたびにジャイアンのシンデレラが脳裏によみがえるのは、道具とキャラクターがこれほどうまく噛み合った話だからでしょう。

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