原子核破かい砲

原子核破かい砲は、名前からして物騒すぎる、ドラえもんでも屈指の危険な攻撃道具です。実際には使われませんが、鬼退治の持ち物としてさらっと出てくるだけで、22世紀の道具管理が心配になります。

鬼ヶ島へ向かうための武器として登場

原子核破かい砲が登場するのは、コミック9巻のぼく、桃太郎のなんなのさです。のび太が夏休みの宿題で町の歴史を調べていると、タイムカメラの写真に桃太郎らしき人物が写っていました。

その謎を追うため、ドラえもんたちはタイムマシンで昔の世界へ向かいます。ところが現地では鬼が人々を苦しめているとされ、のび太たち自身も鬼と間違われて追われることになります。

最終的に鬼ヶ島へ向かう流れになり、ドラえもんは熱線じゅう、光線じゅう、そして原子核破かい砲を用意します。桃太郎の昔話めいた舞台に、急にSF兵器めいた名前が並ぶのがこの回の面白さです。

威力は名前から推測するしかない

原子核破かい砲は、作中で発射されません。そのため実際の威力や効果範囲は不明です。ただ、名前を素直に読むなら、対象の原子核を破壊する砲ということになります。

物体は原子によって構成されています。その中心にある原子核を破壊するなら、対象を分解する、消滅させる、または通常の武器とは比べものにならない反応を起こす可能性があります。子ども向けギャグ漫画に出てくる名前としては、かなり攻めています。

同じ回に出る光線じゅうも物騒ですが、原子核破かい砲はさらに名前が重いです。熱線銃が鉄筋ビルを煙にする道具なら、こちらは物質そのものへ手を出す印象があります。

ただし、ドラえもんの作中で本当にその通りの科学的効果があるかはわかりません。名前だけが大げさで、実際には相手をびっくりさせる程度の道具だった可能性もあります。とはいえ、ドラえもんが鬼退治用に選んだ以上、強力な武器として想定されていたのは間違いなさそうです。

なぜ大長編で使われないのか

原子核破かい砲は、その後の大長編でほとんど存在感を見せません。もし本当に強力な武器なら、鉄人兵団のような本格的な侵略戦で使えばかなり有利だったはずです。

しかし大長編でよく使われるのは、空気砲、ショックガン、ひらりマント、こけおどし手なげ弾のような、相手を止める方向の道具です。敵を完全に消すような武器は、ドラえもんの冒険には合いません。

ここには作品上のバランスがあります。強すぎる道具を出すと、敵との駆け引きや仲間の工夫が消えてしまいます。原子核破かい砲は強そうだからこそ、物語の中心では使いにくい道具なのです。

同じく物騒な地球はかいばくだんも、基本的にはギャグとしての危機に使われます。実戦で便利な道具というより、名前のインパクトで読者を驚かせる役割が大きいです。

初期ドラえもんの物騒な名前

初期のドラえもんには、今読むとかなり強い名前の道具が出てきます。地球はかいばくだん、熱線銃、原子核破かい砲。どれも子守ロボットのポケットに入っていてよいのか考えてしまうものばかりです。

この物騒さは、初期ドラえもんのギャグの勢いでもあります。名前が大げさであればあるほど、場面の馬鹿馬鹿しさが増します。鬼退治に向かうから原子核破かい砲まで出す、という飛躍が笑いになります。

一方で、時代が進むにつれて、こうした名称は扱いにくくなったのかもしれません。ドラえもんの動力源に関する設定も変化してきたように、科学や兵器に関わる表現は時代の空気を受けます。原子核破かい砲が再登場しにくいのも自然です。

地球はかいばくだんとの近さ

原子核破かい砲に似た道具として、地球はかいばくだんが挙げられます。爆弾と砲では形が違いますが、どちらも名前に原子や地球規模の破壊を連想させる物騒さがあります。

地球はかいばくだんは雑誌掲載時に原子爆弾という名前だったとされるため、原子核破かい砲とかなり近い発想の道具だったとも考えられます。どちらも、初期作品ならではの強烈なネーミングです。

ただ、地球はかいばくだんはドラえもんが実際に抱えて暴走する場面があり、読者に強い印象を残します。原子核破かい砲は名前だけに近い登場なので、より謎の道具として残っています。

使われなかったことが救い

ぼく、桃太郎のなんなのさでは、鬼の正体が遭難したオランダ人船長だとわかります。もし正体を確かめる前に原子核破かい砲を使っていたら、取り返しのつかないことになっていたはずです。

ドラえもんの道具は、正しい相手に正しい目的で使って初めて役に立ちます。未知の相手を怖がって強い武器を持ち出すだけでは、かえって危険です。原子核破かい砲は、その危険を名前だけで示しています。

発射シーンがないから地味に見えますが、未使用だからこそ助かった道具です。強い道具を使わずに終わることが、ドラえもんの世界では一番平和な解決なのかもしれません。

原子核破かい砲は、出番の少なさに反して忘れにくい道具です。名前の強さ、用途の不明さ、そして子守ロボットが持っている違和感。そのすべてが、ドラえもんのひみつ道具の奥深さを感じさせます。

名前が強すぎる道具の魅力

原子核破かい砲は、実際の描写よりも名前の印象が先に立つ道具です。原子核という言葉が入るだけで、普通の銃や大砲とは別次元の危険さを感じます。子ども向け漫画の道具名としてはかなり強烈です。

この名前の強さは、藤子F不二雄作品らしい飛躍でもあります。鬼退治に行くから武器を用意する、そこまでは自然です。しかし出てくるのが原子核破かい砲となると、一気に話が大げさになります。ギャグとしてのスケールが急に広がるわけです。

同じ回に出る熱線じゅうや光線じゅうも物騒ですが、原子核破かい砲は特に言葉の重みがあります。具体的な効果が描かれないのに、名前だけで読者に危険を想像させる。短い登場でも忘れにくいのはそのためです。

科学っぽさとギャグの混ざり方

ドラえもんのひみつ道具には、科学っぽい言葉を使いながら、実際にはギャグとして機能するものがあります。原子核破かい砲もそのタイプです。科学用語のような響きがあるのに、鬼退治の持ち物として出てくるため、場面とのずれが笑いになります。

ただし、科学っぽい名前だからこそ、後年になるほど扱いにくくなった可能性もあります。原子や核に関わる言葉は重く、単なるギャグとして出すには時代の空気を選びます。再登場しにくいのも自然です。

それでも、初期から中期のドラえもんにはこうした大胆な名前が残っています。作品の歴史を読むうえでは、原子核破かい砲のような道具も貴重です。ひみつ道具の発想がどれほど自由だったかを感じさせます。

本当に使えたら物語が終わる

もし原子核破かい砲が名前通りの性能を持つなら、敵との戦いはほとんど成立しません。どんな相手でも一撃で終わってしまう可能性があるからです。大長編で使われないのは、物語上かなり当然です。

ドラえもんの冒険は、強い道具で敵を消す話ではありません。仲間と工夫し、逃げたりかわしたりしながら危機を乗り越えるところに面白さがあります。原子核破かい砲は強すぎて、その面白さを奪ってしまいます。

その意味では、原子核破かい砲は使われないことで役割を果たしています。存在だけで危険を示し、実際には平和な解決へ進む。鬼の正体が人間だった話では、なおさら未使用で終わってよかった道具です。

ポケットに入っていること自体が怖い

原子核破かい砲の一番怖い点は、ドラえもんが持っていることです。子守ロボットの四次元ポケットに、どうしてそんな道具が入っているのか。護身用という言葉では説明しきれません。

もし非常用装備だとしても、使用条件の管理が必要です。相手が本当に危険なのか、周囲に人がいないのか、使用後にどんな影響が出るのか。そうした判断を子どもたちとの冒険中に行うのは難しいです。

だからこそ、原子核破かい砲は便利な道具ではなく、持っているだけで不安になる道具です。ドラえもんのポケットの奥には、夢だけでなく危険な可能性も詰まっている。そのことを強く感じさせます。

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